本研究は、液相還元法で合成される金属ナノ粒子、特にCuナノ粒子において、溶液中でのナノ粒子の核生成、成長挙動が欠陥の導入に及ぼす影響について電気化学的な観点から考察し、析出プロセスと導入される欠陥との相関を明らかにすることで、従来、ナノ粒子に対して行われてきた形態やサイズのコントロールだけでなく、格子欠陥を積極的に利用した物性の制御を可能とし、ナノ粒子の産業上の利用範囲の拡大に寄与する基盤技術を確立することを目的として実施した。 本研究により、反応浴中に不純物を添加することによりきわめて簡便に結晶性を制御できることが示された。一方、同時に、不純物による還元剤の活性の変化や析出するナノ粒子の結晶状態(標準生成自由エネルギー)に応じて還元の駆動力が変化し、ナノ粒子の析出プロセスおよび粒径の制御が困難になることが明らかとなった。そこで、研究期間後半には、還元反応(析出速度)に寄与する前駆体物質など、不純物添加以外の浴条件の最適化にも着手し、最終的な成果として、同じ粒径を有していながら結晶性が異なる粒子を合成できることを実証した。また、欠陥導入による不安定化の度合いを、標準生成自由エネルギー変化量をパラメーターとして、電位変化等の測定値を用いて評価するための基礎検討も実施し、電気化学測定手法も含め、取り組むべき学術的課題として提示した。さらに、金属ナノ粒子中の欠陥とナノ材料物性との相関についても調べ、ナノ粒子に導入された欠陥が多い(結晶性が乏しい)際に、固相拡散速度が大きくなることを実験的に実証した。
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