研究課題/領域番号 |
21K14449
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
庄山 瑞季 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 電気安全研究グループ, 任期付研究員 (30631741)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微粒子 / 粉体 / 静電場 / 誘導帯電 / 浮揚 / 輸送 / 積層 / 紫外線 |
研究実績の概要 |
気相中で固体粒子が有する付着性をそのまま利用する積層造形技術は、一般に利用されているめっき法、蒸着法、溶射法と比べて低コストで、薬液使用による環境負荷や熱による材料変質、組成変化がないというメリットがある一方、粒子の分散状態を保持することが難しい。本研究では、電場と振動を利用した気相中の微粒子積層技術の確立を目指す。これにより、個々の粒子の帯電と運動を同時に制御し、分散させた状態で積層させることができるため、粒子を短時間で連続的 に移送・供給するシステムにおける積層デザインが可能となる。 2021年度は、複数の網電極と静電加速器を利用して粉体を鉛直下向きに輸送したのちターゲット電極上に堆積させる方法、および電場と紫外線を併用してより多くの粒子を帯電・浮揚させる方法を見出した。また、粒子混合によって積層粒子内の電荷蓄積を抑制できる可能性を示した。 2022年度は、上記で得られた知見を基に、多層網電極によって水平方向および鉛直上向きに粒子を分散しながら輸送する新しいシステムを用いた実験を行った。2022年度の研究実績は以下の通りである。 1.一層おきに同電位となるよう直流電圧が印可された多層網電極を有する新しい粒子の分散輸送システムを用いて、数十ミクロンサイズの粉体の分散輸送実験を行い、粒子の供給位置と輸送効率の関係を明らかにした。 2.多層網電極によって形成される複合電場と、その電場中で輸送される粒子の運動を解析した。また、電極内の粒子の輸送が拡散によるものであると仮定して粒子の濃度分布をモデル化し、その数値計算の結果と実験結果の比較を行うことで、粒子の分散と輸送メカニズムを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多層網電極を有する粒子の分散輸送システムを用いて、鉛直下向き、鉛直上向き、および水平方向における数十ミクロンサイズの粉体の分散輸送に成功した。また、多層網電極を用いた新しい粒子の分散輸送システムを用いた実験を行い、粒子の供給位置と輸送効率の関係を明らかにした。さらに、粒子の電極間輸送における濃度分布をモデル化し、数値計算の結果と実験結果の比較を行うことで、粒子の分散と輸送メカニズムを解明することができ、次年度研究に向けた重要な知見が得られた。これらは,目標達成に寄与する重要な成果であり,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた知見を基に、付着性・凝集性が高い数ミクロンサイズの粒子を用いた輸送実験を行い、数十ミクロンサイズの粒子による実験結果との比較、および電場解析と粒子の運動軌跡の計算によって、粒子径が積層形状に及ぼす影響について検討する。また、電場による粒子荷電が不十分である場合の対策として、紫外線併用時の連続荷電効果を評価する実験を行う予定である。さらに、数十ミクロンサイズの粒子の混合・堆積実験を行い、堆積させた粉体層の表面電位を計測する。高速度カメラを用いて堆積層の形成過程を撮影・観察し、粒子混合による電荷蓄積の抑制効果と積層形状に及ぼす影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、コロナ禍の影響により、学会への参加がオンライン形式となり、旅費および参加費の一部がかからなかった。次年度以降は、装置の改良や計測システムの製作に必要な3Dプリンタを計上する。また、実験に必要な粒子や電極等の消耗品を計上する。その他、現地開催の国際会議および国内学会での成果発表を行うために必要な参加費・旅費、および論文発表に必要な経費を計上する。
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