気相中で固体粒子が有する付着性をそのまま利用する積層造形技術は、一般に利用されているめっき法、蒸着法、溶射法と比べて低コストで、薬液使用による環境負荷や熱による材料変質、組成変化がないというメリットがある一方、粒子の分散状態を保持することが難しい。本研究では、電場と振動を利用した気相中の微粒子積層技術の確立を目指す。これにより、個々の粒子の帯電と運動を同時に制御し、分散させた状態で積層させることができるため、粒子を短時間で連続的 に移送・供給するシステムにおける積層デザインが可能となる。2023年度の研究実績は以下の通りである。 1. 電圧が印加された振動ノズルから付着性・凝集性が高い粒子径6.4 μmの粒子を鉛直下向きに供給する実験を行い、凝集粒子の解砕が主に管壁との衝突により生じることを確認した。また、粒子供給部の振動周波数と粒子間付着力の関係についての理論的考察を行い、分散状態で粒子が供給される条件を明らかにした。 2. 振動ノズルから分散状態で供給された粒子径6.4 μmの粒子を静電加速電極によって輸送したのち電極上に積層させる実験を行った。ノズルと電極によって形成される電場を解析し、電場中の帯電粒子の軌跡を計算した結果、電極構成および電極間の電位差が粒子の積層範囲に影響を及ぼすことが明らかになった。 3. 粒子径30 μmの粒子による実験結果との比較を行った結果、粒子に作用する慣性と電場による浮揚特性が粒子径によって異なるので、粒子径に合わせた電極構成と電場の強度を選択する必要があることが分かった。
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