研究課題/領域番号 |
21K14452
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
櫻木 潔 一般財団法人電力中央研究所, エネルギートランスフォーメーション研究本部, 主任研究員 (10638018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微細藻類 / アンモニア / 気液相変化 / 抽出 / 脱水 / バイオ燃料 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
微細藻類からのバイオ燃料生産では、油分抽出溶剤としてヘキサンが多く用いられている。しかし、ヘキサン抽出の前処理である乾燥粉砕工程のエネルギー消費量が大きいため、未粉砕の湿った試料から直接油分を抽出できる湿式抽出技術の開発が求められている。本研究では、液化アンモニアを溶媒として用いる微細藻類からの湿式抽出技術の構築を目的とした。今年度は、まず液化アンモニアを微細藻類試料に常温通液可能な試験装置を作製した。本装置は、主に液化アンモニア貯蔵容器、試料容器および回収容器から構成され、試験後の抽出物および抽出後試料を回収できる特徴がある。本装置を用いて微細藻類からの油分抽出試験を実施するとともに、比較試験として、代表的な油分抽出法であるソックスレー法(ヘキサンを抽出溶剤として使用)およびBligh & Dyer法(クロロホルムおよびメタノール混合液を抽出溶剤として使用)による試験を実施した。加えて、抽出物に含まれるバイオ燃料成分(脂肪酸)組成を明らかにするため、酸触媒を用いたエステル化反応と、ガスクロマトグラフ質量分析計による定性分析を実施した。微細藻類試料(水分75.9 wt.%)に液化アンモニアを常温通液したところ(アンモニア/微細藻類試料重量比10)、可燃性の抽出物が得られるとともに、ほぼ全量の水が微細藻類試料から脱水されることが明らかになった。また液化アンモニアによる抽出では、未粉砕の湿った試料から、ヘキサンソックスレー法およびBligh & Dyer法と類似する脂肪酸が抽出できることが分かった。これらのことから、液化アンモニアを抽出溶媒として用いることで、微細藻類に含まれる脂肪酸の抽出と脱水を常温で同時に行うことができる湿潤抽出技術を構築できる可能性が見いだされるとともに、得られた成果は特許出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液化アンモニアを微細藻類試料に常温通液可能な試験装置を作製して、試料からの油分抽出試験を実施することができた。微細藻類からの湿式抽出溶媒として、液化アンモニアを利用することができる可能性が示されたため、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、液化アンモニアによる微細藻類試料の脱水および油分抽出試験を実施する。液化アンモニアの試料への通液量を段階的に変更し、油分抽出に必要となる液化アンモニア量を明らかにする。また得られた抽出物および抽出残渣の分析を行い、バイオ燃料などとしての利用可能性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染状況を鑑みて、予定していた出張を見送った。試験実施に必要となる耐圧容器の調達に充当する予定である。
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