微細藻類からのバイオ燃料生産工程では、乾燥工程や細胞破砕工程のエネルギー消費量が大きい。燃料生産工程のエネルギー消費量を抑制するためには、湿潤未破砕の微細藻類試料から、燃料となる脂質を直接抽出する技術の開発が不可欠である。本研究では、液化アンモニアを溶媒として用いて、湿潤未破砕の微細藻類試料から脂質を直接抽出する技術を構築することを目的とした。 微細藻類試料に液化アンモニアを通液可能なプラグフロー型装置を作製して、0.85MPa、20℃にて脂質抽出実験を実施した。比較のため、既存の抽出方法として、乾燥破砕試料に対してソックスレー法(溶媒としてヘキサンを使用)および湿潤破砕試料に対してBligh & Dyer法(溶媒としてクロロホルムおよびメタノールの混合液を使用)による脂質抽出実験を実施した。 アンモニアと微細藻類試料の重量比が45:1のとき、微細藻類試料の約48.5 wt.%(乾燥重量基準)が粗抽出物として得られるとともに、試料中の99 wt.%以上の水が固体部分から脱水された。アンモニアは分子内に窒素を含有するが、液化アンモニア抽出法で得られた粗抽出液中の窒素濃度は、抽出前試料と比較して減少した。また既存の抽出方法と同様に、液化アンモニア抽出法で得られる粗抽出物には、バイオディーゼル原料となる炭素数12から20の脂肪酸が含まれるとともに、既存の抽出方法と同程度の収率で、微細藻類試料からバイオディーゼルが得られることが分かった。これらのことから、液化アンモニア抽出法は、湿潤未破砕の微細藻類試料から、脂質などの付加価値の高い成分を抽出できる魅力的な方法であることが示された。
|