研究課題/領域番号 |
21K14456
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
福田 貴史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (50734969)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構造体触媒 / 3D積層造形 / 輸送現象 / 機械学習 / 粉末積層造形法 |
研究実績の概要 |
本研究では、(i)気相反応、(ii)液相反応、(iii)気液二相反応へと対象とする反応系を拡げる計画である。初年度では、触媒調製法の確定、(i)気相系のモデル反応において、従来的な構造体として挙げられるハニカム構造を反応性能で上回る構造体を提案する。具体的にはCFDシミュレーションで有望な構造を絞り込み、反応試験で実証する。 3D積層造形は粉末積層造形法により行った。構造体の材質としてα-Al2O3を採用した。セラミックスは金属と比較して腐食性流体への耐性が期待できるためである。また1600℃の焼結温度に耐え、かつ広く触媒担体として用いられているためである。 まず、(i)~(iii)いずれのモデル反応に対しても触媒活性を有するとされるNi/α-Al2O3系触媒を調製することとした。触媒活性に再現性があり、かつα-Al2O3の構造体(外径10mm、重量は形状によって異なるが1.6g程度)および粉末体(40μm程度)の両者に適用可能な調製法として、24時間以上含浸させる方法をとった。この条件は(i)の吸熱系のモデル反応として選定したCH4/CO2改質反応(CH4+CO2=2CO+2H2-247kJ/mol)の反応試験から判断した。 触媒有効係数が0.99<と試算されたことから、後者の粉末触媒から得られた反応速度パラメータを反応律速下のものとみなしてCFDシミュレータに取り込んだ。構造体を3D積層造形する際の制約として、未焼結粉を除去するために2mm程度の隙間が必要となる。この制約の下で、各種の構造体の形状データを用意し、シミュレータ上で反応性能を比較した。その結果、 (メタン転化率[%])/((圧力損失[Pa])・(幾何学的表面積[m2]))の指標において、ハニカム構造や球充填構造よりも有望な数種の格子構造がみつかった。反応試験においても格子構造の高い指標値が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、触媒調製法の確定と(i)気相系のモデル反応において、従来的な構造体として挙げられるハニカム構造を反応性能で上回る構造体を提案することである。再現性のある触媒調製法を確定した。また、数種の格子構造が有望な構造であることをシミュレーションにより特定し、反応試験において確認した。 以上、初年度の計画を達成できたため計画通りの進捗と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
機械学習に必要なデータを効率的に取得するための反応試験のシステム構築に着手する。また、異なるモデル反応での検討を進める。発熱系の気相反応系としてサバティエ反応(CO2+4H2=CH4+2H2O+165kJ/mol)を、液相反応系として鈴木-宮浦カップリング反応によるビアリール合成 (例えば、Ar1-X + Ar2-B(OH)2=Ar1-Ar2 + BX(OH)2)を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
開始時点でシミュレーション検討がすでに進展していたため、初年度のライセンス購入が不要となった。このためシミュレータのライセンス購入は翌年度に持ち越すこととした。残りの費用は、効率的にデータ取得するための反応システムの構築と消耗品の費用に充てる。
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