研究実績の概要 |
1年目に,この合成は,原料に用いたTiO2の粒子形態を保持したTi2O3が生成することを見出した.2年目はこれらのTi2O3のアセタール化に対する活性を評価した.粒子径の異なる三つの球状粒子(Sphere-S, M, L)および棒状粒子(Rod)のTi2O3を用いてフルフラールとエタノールからのアセタール化を行った.活性の序列はSphere-S > Sphere-M > Sphere-L > Rodの順であった.三つの球状粒子の活性は主に粒子の大きさに依存する比表面積によって決定されたと考えられる.RodはSphere-MとSphere-Lの中間程度の比表面積を有していたが,極めて低活性であった.合成に用いた還元剤のTiH2由来の不純物が粒子表面に残っていたことが低活性の原因ではないかと推測される. Ti2O3に加えて,Ti3+, Ti4+の混合原子価酸化物であるTi3O5, Ti4O7を合成し,活性評価を行った.Ti2O3で活性の高かったSphere-Sと同様の粒子形態をとったTi3O5, Ti4O7を対象とした.不純物の少ないTi2O3, Ti3O5, Ti4O7はアセタール化に対してほぼ同程度の活性を示した.一方,TiO2はまったく活性を示さなかった.この結果は,低原子価チタン酸化物に含まれるTi3+が触媒作用を決定することを示唆している. 低原子価チタン酸化物を用いたアニソールの水素化脱酸素反応を検討したが,単味のTi2O3は低活性であった.水素活性化能を確保するためにコバルトを担持したCoOx/ Ti2O3は本反応に良好な触媒性能を示し,TiO2など他の担体を用いた触媒と比較して最も高い活性を示した.このような高活性が発現した原因は,Ti2O3が部分的に酸化されたコバルト種の再還元を促進するためであると推測された.
|