研究課題/領域番号 |
21K14461
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤墳 大裕 京都大学, 工学研究科, 助教 (90757105)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭素担持銅触媒 / キシリトール / キシロース / 水素化 / イオン交換樹脂 / キシロオリゴ糖 |
研究実績の概要 |
本研究ではキシロースとキシロオリゴ糖から成る不均質な低分子化ヘミセルロース原料をキシリトールを選択的に合成するための触媒反応プロセスの開発を目的とする.本年度は①陽イオン交換樹脂を前駆体とした炭素担持金属触媒調製法により炭素担持Cu触媒(Cu@C)と炭素担持Ni触媒(Ni@C)を調製し,一般的なCu触媒とキシロース水素化反応活性を比較し,②低分子化ヘミセルロース水素化反応条件を検討した. ①陽イオン交換樹脂を前駆体とした触媒調製法により得られたCu@Cは金属担持量が56wt%、金属粒子径が20 nm、Ni@Cは金属担持量が45wt%、金属粒子径が2.3 nmであった.一方,触媒学会提供のAl2O3,SiO2,MgOに含浸法によりCuを10wt%で担持した含浸触媒は金属粒子径が12~42 nmであり,Cu@C,Ni@Cは高担持量にも関わらず金属の微粒子状態が維持されることを見出した.これらの触媒を用いキシロースの水素化反応試験を行った.反応物には3wt%試薬キシロース水溶液30 gを用い,触媒量0.2 g-metal/g-xylose,初期水素圧1.1 MPa,130℃,3時間反応を行った.担体の固体酸/塩基性が弱いCu@C,Ni@C,Cu/SiO2ではキシリトールが選択的に生成したのに対し,担体が強い固体酸/塩基性を持つCu/Al2O3,Cu/MgOではキシリトール収率が低く,ペンタントリオール類などが副生成物として得られた.また,Ni@Cは高いキシリトール収率を得たが,反応後の触媒はNi微粒子の顕著な凝集が観察された.以上より, Cu@C,Cu/SiO2が望ましいと結論付けた. ②Cu@Cを用い,キシロース水素化反応の初期水素圧の影響を検討した.初期水素圧が0.8MPaのときにキシリトール収率が最大となり,Cu上では水素とキシロースとの競争吸着が起きたことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度の途中に研究代表者の異動があり,数か月反応活性試験が出来ない期間があったものの,現所属においてもスムーズに研究を始めることができ,実施計画にある反応条件の選定として触媒担体,金属種,初期水素圧依存性について明らかにすることができた.現時点までは研究開始時の想定どおり,イオン交換樹脂を前駆体とした炭素担持Cu触媒がキシロース水素化反応に有効であった.一方で,初期水素分圧の影響は想定から外れていたものの解釈可能な結果であり,当該反応系の現象を理解するにあたり重要な知見につながった.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討によりCu@CとCu/SiO2が目的反応に望ましいことを見出した。今後は,これらの触媒をベースにし,キシロビオースやキシランといった低分子化ヘミセルロースを用い,加水分解反応と水素化反応を同時に行い,キシリトールの選択合成を試みる.加水分解反応には酸/塩基触媒が一般的に用いられる.Cu/SiO2触媒ではSiO2の持つ弱い酸/塩基点が,Cu@C触媒では低温酸化処理を施して導入した含酸素官能基が,それぞれ加水分解反応の活性点として作用することを確認する.低分子化ヘミセルロースからのキシリトール合成に有効な触媒を選定し,加水分解と水素化反応のそれぞれの活性点の比を変え,それぞれの反応速度を解析し,それぞれの反応速度が釣り合い,もっとも効率的にキシリトールが生成する触媒性状を調整する. ただし,キシロビオースの加水分解反応にSiO2や導入含酸素官能基がうまく作用しない場合には,触媒種を含めた反応条件の検討を行い,多段反応器を含めたプロセスの検討を行う.また,低温酸化処理によるCu@Cへの含酸素官能基の導入は活性金属粒子の凝集を抑制しつつ,担体炭素表面を酸化し含酸素官能基を導入するため,精密な温度制御が求められる可能性がある.状況に応じて酸化処理用に,温度制御が容易な小型の流通反応器を自作する.
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