研究実績の概要 |
研究実績概要 (Max 600-800) 本研究ではキシロオリゴ糖とキシロースを含む不均質な低分子化ヘミセルロース原料を加水分解と水素化反応によりキシリトールを選択的に合成するための触媒反応プロセスの開発を目的とする.昨年度はキシリトールの水素化反応に有望な触媒として,イオン交換樹脂を前駆体とした炭素担持Cu触媒(Cu@C)を選定した.当該触媒は67 wt%と高い金属担持量と18 nm程度の比較的小さいCu粒子径を持つ.また,担体が副反応に寄与する活性点を持たないため,高いキシリトール収率を実現した.本年度は,Cu@C触媒を対象にキシロース選択水素化反応の反応温度,初期水素圧,反応原料濃度の影響を詳細に検討するとともに,反応原料をキシロースの二量体であるキシロビオースに展開し,キシリトール選択合成を実施した. 初期水素圧1.1 MPaにおいて,130 °C以上でキシリトールが生成し,反応温度の上昇に伴い水素化脱酸素反応生成物であるペンタントリオール,ペンタンジオールの選択率が増加した.水素化反応の活性化エネルギーが水素化脱酸素反応のものより小さい.また,初期水素圧の増加に伴いキシリトール生成速度が増加した.一方で,反応時間の増加に伴い,水素化脱酸素反応が進行し,キシリトールが逐次反応の中間生成物であることを明らかにした.130 °C, 3時間, 初期水素圧1.1 MPaにおいて,キシロース原料濃度を2倍(1.5wt%→3wt%)にしても,キシリトール収率は15 C-mol%でほとんど変化がないことから,1.5wt%キシロースにおいてもCu表面上のキシロースが平衡吸着量に到達し,水素の触媒表面への供給が律速段階である可能性が示唆された. キシロビオース原料を反応物に用いたところ,キシリトールのみが生成したがその収率は3 C-mol%にとどまった.キシロビオースの加水分解が進まなかったことに起因し,副反応の進行を抑えつつ加水分解を促進するような触媒の改良が必要との知見が得られた.
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