研究課題/領域番号 |
21K14474
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森 裕太郎 神戸大学, 工学研究科, 助教 (50758539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タンパク質工学 / インシリコシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、持続可能な環境調和型社会の実現に向けて、目的化合物の生産量を向上させることを目的として、高活性な酵素変異体を合理的に開発するための設計戦略の確立を目指す。具体的には、フェニルアラニン脱アンモニア酵素(PAL)を鋳型酵素として活性測定を行い、分子動力学シミュレーションとの比較から酵素反応速度に関わる要素の抽出とそれに基づいた高活性な変異体設計のためのルール構築を行う。特に現在、酵素と基質の間の親和力を基準として酵素反応速度パラメーターKmを向上させるような研究例は多く行われているものの、反応速度Vmaxについて基準とできる計算値・指標が存在していない。そこで本研究ではVmaxを向上させうる酵素変異体の設計指針を確立させる。
各PAL変異体における基質分子が取り込みから活性中心へ移動するのに必要な時間の計算値をin silicoデータ、PALの酵素活性中心を除いた部分に変異を導入した酵素変異体群の活性データをin vivoデータとし、情報蓄積を行った。具体的にはPAL一残基変異体を100個程度新たに作成し、これを評価することで、野生型の活性と比較して5.6倍程度のVmaxを持つPAL変異体のバリエーション獲得に成功した。また本研究で用いるPALに関しては、基質の取り込みだけでなく、今後、さらなる検討をすすめ、in vivoのデータとin silicoデータの統合作業を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗については大きな問題等は見られなかったため、次年度も引き続き検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
活性測定で使用している大腸菌株について、フェニルアラニンからケイヒ酸を生成する本系に関わる新たな知見が得られたため、そちらについての改良を行う。得られた改良株を使用しデータの収集を行うとともに、さらなる酵素変異体の開発を行う。
本研究において最大のボトルネックがin silicoでの計算過程となってしまっているため、今後のさらなる研究の高速化を見据え、計算の自動化・簡略化についても取り組む。
本年度においては、これらin vivoのデータとin silicoデータの統合を行い、計算予測から高いVmaxを持つ変異体を開発可能か検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度までは多少の遅延は発生していたものの、順調に研究は進行しており、追加で1年間期間を延長することでさらなる研究成果が見込めたため、期間延長の申請を行った。
研究予算については主に研究にかかる消耗品や変異体構築のためのシーケンス費用等の物品費として使用し、必要に応じて研究成果の報告・最新の情報収集のための旅費として使用する予定である。
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