研究実績の概要 |
当該年度は、前年度用いた25核の金原子から成るチオラート保護金クラスターに加えて、102核のチオラート保護金クラスターを用いて、層状複水酸化物(LDH)へのインターカレートを試みた。前年度見出した焼成手法を用いることで、どちらの前駆体を用いた場合にも一部の配位子を選択的に残留させた金クラスター触媒の担持に成功した。典型的なバイオマス変換反応ある、5-hydroxymethylfurfural (HMF)の酸化反応による2,5-furandicarboxylic acid合成反応に対して今回作製した金クラスター触媒を適用した。本反応は比較的高温の反応条件を必要とするため、一般的な析出沈殿法により作製した金ナノ粒子触媒(1 wt%)は再利用により著しい失活が見られたが、一部の配位子を残留させた本触媒は最大24 wt%の触媒においても大きな失活が見られなかった。そこで、25核と102核の触媒活性を比較したところ、102核の触媒が律速段階において約22倍高活性を示したため、本反応においてクラスター領域で顕著なサイズ効果が現れることを初めて見出した。 一方で、今回作製した金クラスター触媒がLDHにインターカレートされているのではなく、LDH層のエッジ部分に並んでいる可能性が示唆された。これは配位子保護金クラスターの存在下でLDHを析出させたため、LDHの結晶性が悪くなったことが原因であると考えられた。そこで、あらかじめ高い結晶性でLDHを作製し、層はく離してから配位子保護金クラスターを導入する手法でインターカレート構造体の合成を試みた。実際に合成した試料の電子顕微鏡観察では、高結晶性のLDHが複数重なった構造体が見られ、各層に金クラスターが集積されている様子が確認できたため、インターカレート構造体が形成していると結論付けた。現在、新たな触媒反応への応用を検討している。
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