天然化合物である環状オリゴ糖のシクロデキストリン(CyD)と高生体適合性の線状ポリエーテルを室温の水中で混合するだけで、トポロジカル超分子構造を有するナノシート材料(擬ポリロタキサンナノシート:PPRNS)が作成される。 本研究では、PPRNSのサイズやサイズ分布、機能化の制御と、制御のための方法論および理論の構築を目指し研究を行った。 本年度は昨年度に引き続き、CyDとの相互作用が異なる官能基を軸末端に付与し、各軸のPPRNSの形成速度を調べた。昨年度は、CyDと軸末端官能基との相互作用はPPRNSの形成速度に影響を及ぼすことが分かった。本年度はさらに、CyDとの相互作用が中程度の場合にPPRNSの形成は加速され、相互作用が非常に弱い弱または非常に強い場合にはPPRNSの形成速度が遅延することが明らかになった。相互作用が非常に弱いとCyDの包接頻度が少ないためPPRNS形成が遅延し、一方で相互作用が非常に強いとCyDが軸末端を包接した状態で安定化し、軸主骨格への包接が遅延するためと考えられる。さらに、PPRNS形成が速い場合にCyD/軸の比が小さく、一方で遅い場合にはCyD/軸比が大きくなった。軸末端基という化合物中のごくわずかな部分(重量で1wt%程度)によって、構造形成のキネティクスと最終生成物が劇的に変化することは、トポロジカル超分子材料に特徴的な性質であると考えられる。 また、軸末端基が異なる二種の軸分子を順番に系に投入してPPRNS形成を行ったところ、形成後期に投入した軸はひし形のPPRNS粒子の二辺に特異的に導入されることが明らかになった。その詳細な機構は今後の研究で調査予定である。
|