研究課題/領域番号 |
21K14481
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
三輪 邦之 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (60734390)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノ光学 / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
ナノメートルスケールのギャップを持つ金属構造の間に単一の分子が配置された系(単一分子接合)における光・電荷キャリア・スピンのダイナミクスを明らかにするための理論研究を推進した。昨年度は、金属ナノ構造の表面近傍に励起されうる局在表面プラズモン(LSP)と、分子が強く結合した系において、スピン一重項・三重項励起状態のエネルギー配列に着目し、光との強結合によって分子の電界発光特性を制御できることを示し、その成果を論文として発表した。今年度は、(1)このような強結合領域にある単一分子接合からの電界発光において、分子接合における2つの電極と分子の各々の軌道との結合強度が発光効率を決める上で肝要な役割を果たすことに着目し、理論解析を通して、電界発光の高効率化を実現する条件やパラメータ領域を見出した。さらにそれを実現するための材料設計について詳しく調べる研究を進めている。また、(2)単一分子接合系にパルスレーザー光を照射した際の応答を調べるための理論手法の開発を行った。一例として時間分解蛍光および過渡的に励起または帯電された分子における電荷キャリアのダイナミクスを解析した。これらと並行して、(3)電荷キャリアとその周囲の環境のダイナミクスのインタープレイおよびそれらが物質特性に果たす影響を解明するための基礎理論を構築する、より基幹的な研究を行った。ここでは、柔軟で非調和な格子環境における電荷キャリアダイナミクスを記述する理論を構築した。この成果は、分子骨格や物質の格子などが柔軟で非調和性が顕著に現れるようなシステムにおける電荷キャリア、または励起エネルギー、のダイナミクスの解明に貢献することが期待できるもので、本研究課題の動機の本質部分と密接に関連した枢要なものである。本成果を論文にまとめ学術雑誌に投稿するとともに、国内および国際学会において発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間分解分光スペクトルや過渡的ダイナミクスを解析するための理論の構築、また電荷キャリアとその周囲の環境のダイナミクスのインタープレイを記述する理論の構築を行い、後者についてはその成果を論文にまとめて学術雑誌に投稿するなど、研究が進展しているため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
非線形な応答や過渡的な応答を調査・観測するための物理量について引き続き理論の構築を行うとともに、スピン変換過程やエネルギー変換過程を解明する理論的研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の使用額が当初計画していた額を下回ったため、次年度使用額が生じた。これは新型コロナウィルス感染症蔓延が落ち着いた昨今でもオンラインで開催される学会や研究会が普及するなどし、旅費の使用額が計画時よりも抑えられたからである。次年度はこれまで得た研究成果を発表するための国際学会への参加や、現在進めている研究の進展などを目的とした研究機関への出張などに使用する予定である。
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