研究課題/領域番号 |
21K14491
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡部 花奈子 東北大学, 工学研究科, 助教 (30847249)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 触媒システム / ナノ粒子 / 中空粒子 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、1) 大きさの異なる細孔を有する中空シリカ粒子を合成し、2) バルク相から中空シリカ粒子空隙内部への物質移動を評価した。 1) 中空シリカ粒子を触媒ナノ粒子の担体として用いる場合、シリカ殻(シェル)の細孔径が反応物および生成物の拡散性に強く影響する。ここでは、まず触媒粒子を格納しない中空シリカ粒子において、シェルの細孔径を制御する手法の確立を試みた。界面活性剤ミセルを鋳型とするアプローチにより、細孔径が約2 nmの中空シリカ粒子の合成に成功した。さらに、合成系に種々有機分子(膨潤剤)を添加し、ミセルサイズを拡大させることで、シェル細孔径をさらに増大可能であることも確認した。本合成手法は、触媒粒子を内包した場合でも適用可能であるため、現在は触媒粒子を内包した中空シリカ粒子合成において、シリカシェルの細孔径制御に取り組んでいる。 2) 1)で合成した種々中空粒子のシリカシェル内外の物質移動を共焦点レーザー顕微鏡により評価した。中空粒子を固定化したキャピラリー内にモデル分子となる蛍光色素水溶液を注入し、所定時間経過後の中空粒子内部への蛍光分子も取り込み速度(移動速度)および取り込み量を評価した。バルク相から中空粒子内部への蛍光色素の移動速度は、シリカシェルの細孔径に強く依存し、細孔径が蛍光分子よりも大きい場合には速やかに物質移動が生じることがわかった。さらに、細孔径が大きな中空シリカ粒子は、それが小さな中空粒子と比較して多くの蛍光分子を取り込むことも確認した。以上の検討結果から、触媒粒子を内包する中空シリカ粒子の細孔径は対象物質、つまり触媒反応の反応物ならびに生成物の大きさを考慮して設計する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの検討で、中空シリカシェルの細孔径がシェル内外の物質移動、ひいては触媒反応における反応物および生成物の拡散性に強く影響することが明らかになった。これを受けて、令和4年度は当初予定していた実験計画に加え、シェル内外の物質移動を定量的に解析した。この追加検討事項により、令和4年度中に実施予定であった触媒活性評価を達成するまでに至らなかった。令和5年度は、触媒粒子を内包した中空粒子の活性を、バッチ式および流通式反応器を用いて評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
反応物ならびに生成物よりも大きな細孔を有する中空シリカ粒子の空隙内部に、触媒ナノ粒子を内包する。得られた触媒内包型中空粒子を用いてバッチ式および流通式反応器での触媒活性評価を行う。流通式反応では、同粒子を微小流路(マイクロ流路含む)に固定化して使用することを想定する。この場合、粒子充填による流路の圧力損失増大が懸念される。そのため、粒子充填流路内部の局所圧力を数値計算により予測し、流路全体の圧力損失を抑える中空シリカ粒子(シェルの厚みや細孔径)の設計も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は当初予定していた実験計画に加え、中空シリカ粒子のシェル内外の物質移動を検討した。この研究計画の変更により、主に物品費が抑えられた。繰り越し分の助成金については、シェル内外の物質移動を数値計算により詳細に解析するための設備導入、ならびに国際共同研究を遂行するための海外旅費に充てる予定である。
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