研究課題/領域番号 |
21K14496
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
杉本 泰 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40793998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 構造色 |
研究実績の概要 |
本研究では、高屈折率誘電体ナノ粒子のMie共鳴を用いたインク色材の開発を目標としている。「塗る」ことで鮮やかに発色可能なインク色材開発に向けた材料・設計手法などの基盤技術を確立し、外部から能動的な色彩制御を目指す。本年度は、以下の研究を実施した。 (i) 可視域でMie共鳴を示すシリコンナノ粒子の散乱特性制御、分散安定性、および光安定性の向上を目的として、Stober法によりシリカシェルを形成する技術を開発した。10-30 nmで精密に膜厚を制御してコーティングする技術を開発した。これにより、水やアルコール中での長期間安定性と、発色の光安定性の向上が期待できる。さらに、Metal-assisted etching法を応用し、シリコンナノ粒子にナノ細孔を形成することで、実効的な屈折率の制御と、それによる散乱スぺクトル変化を理論・実験の両面から明らかにし、散乱スペクトル制御の新しい方法を提案した。 (ii) シリコンナノ粒子の多量体構造は粒子間での電場・磁場増強や散乱指向性、導波モードの形成など興味深い特性を示す。そのため、多量体化により色相制御範囲を拡大できる可能性がある。従来のトップダウンプロセスではなく、ボトムアッププロセスで溶液に分散したシリコンナノ粒子をナノパターン上に集積し、多量体を形成する技術を開発した。ナノパターン上に移流集積法を用いてナノ粒子を配置し、形成された多量体構造の光学特性をFDTDシミュレーションと顕微分光測定により調査し、粒子間の相互作用が光学特性に与える影響を明らかにした。 以上に加えて、コロイドシリコンナノ粒子の形成方法と光学特性、応用機能について総括したReview Paperを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mie共鳴を利用したナノ粒子インク色材として、様々な機能の実装に成功しており、おおむね順調に進行している。また、特殊印刷技術につながる技術やナノ構造加工技術による色相制御にも一定の方向を見出しており、今後マクロなスケールで本技術を実装することで、単一の材料で広い波長範囲でインク色材として利用可能である。さらに、本材料を基盤として、複数の国際共同研究を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に行った研究を、さらに発展させる。当初の計画通り、コアシェル構造や異種材料との複合化による色相制御技術の実証と、構造色をアクティブにチューニングする技術を開発する。インクの溶剤、バインダー、吸収材料の混合を検討し、平坦基板上や紙面上基材への着色を総合的に調査することで、基材の色・材質に依存しない着色法を開発する。また、インクジェット印刷など汎用的な印刷法の適用可能性を検証する。これらにより得られた印刷物の発色を、多重散乱効果を考慮したモンテカルロシミュレーションによる解析を用いて定量的かつ再現可能な手法として確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに執行したが、消耗品の価格に軽微な残額が生じた。次年度の計画に支障はない。
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