研究課題
本研究では、高屈折率誘電体ナノ粒子のMie共鳴を用いて、「塗る」ことで着色可能なインクの開発を目的としている。最終年度は、以下の研究を実施した。(i) Mie共鳴による発色に加えて、蛍光による機能拡張を目的として、シリコン-蛍光色素コアシェルナノ粒子を開発した。シリコン粒子の表面に蛍光色素を修飾し、薄いシリカシェルを形成した。顕微鏡観察により個々のナノ粒子が暗視野散乱と蛍光の両方を示すことを実証した。さらに、顕微分光により測定した単一ナノ粒子の散乱スペクトル、発光スペクトルより、Purcell効果による蛍光色素のスペクトル形状制御を実証した。(ii) シリコンナノ粒子インクの高い隠蔽性を定量的に実証するために、ナノ粒子を六方格子状に配列し、粒子間距離を変化させたときの単層膜の反射スペクトルを計算した。その結果、ナノ粒子同士が接触している場合に比べて、充填率が低い場合に反射率が高いことを示した。実験的に、LB法によりナノ粒子単層膜を作製し、拡散反射スペクトル測定を行った。単層膜であるにもかかわらず、構造発色を目視で確認でき、反射率20%以上を達成した。実際の塗布膜を想定し、透明媒質(n ~1.5)にシリコンナノ粒子が分散した系について反射特性を計算した。これにより、ナノ粒子のサイズ、充填率、薄膜の膜厚と反射特性の関係を明らかにした。(iii) 計算結果を基に作製したシリコンナノ粒子インクを用いて、スピンコート法・インクジェット・毛筆を用いて塗布膜の作製・描画の実証を行った。また、インクジェットで0.2 mm程度のドットを形成し、ナノ粒子の粒径と充填率で色相を制御できることを示した。また、100 dpi程度の解像度で4色のカラー印刷を実証した。以上のように、Mie共鳴を用いた構造色インクについて、「塗る」ことで着色可能なインク色材開発に向けた基盤技術を確立した。
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