研究課題
本年度は、液状原料を用いてテルル化モリブデン原子細線集合体の合成に成功した。これまで開発してきた遷移金属カルコゲナイド原子細線の合成は固体(粉末)原料の使用が殆どだが、気化させる際に原料濃度の制御がしづらいため、場所によって基板上でできる試料の密度が大きく変わってくる。実用化にむけて,合成した試料の均一性の向上を達成するため、本研究では液状原料を導入し、スピンコート法によってその原料を表面処理した基板全面に塗布したあとに化学気相成長法(CVD)を通じて試料合成を行った。Mo原料のテルル化によって、基板上に原子細線からできた薄膜を作製した。ラマン分光測定によりテルル化モリブデン原子細線固有のピークが確認でき、その狭い半値幅から品質の高いものができていることが示唆された。なお、原子間力顕微鏡(AFM)の測定からその薄膜に太いバンドル(幅50-100 nm)と細いバンドル(幅30-50 nm)の二種類が含まれていることが分かった。今後は基板表面の処理状況(原料の塗布条件)と成長パラメータ(原料の種類、成長温度、成長時間など)の最適化を行い、バンドルサイズの制御が可能な合成を目指す。また、低温測定により合成した試料の電気伝導特性を調査する。特に、タングステン系試料との違いや異なる幅を持つバンドルの電気伝導特性がどう変わるのかを確かめていく。さらに、作製した原子細線の断面試料を用意し、透過型顕微鏡(TEM)の観察によりバンドルの細かい構造と試料の純度を調べる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
応用物理
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https://www.saitama-u.ac.jp/topics_archives/2023-0417-2135-9.html
https://www.eurekalert.org/news-releases/986593