研究課題/領域番号 |
21K14501
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 大地 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80823640)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ / カーボンナノチューブ / レーザーアブレーション / 非破壊検査 / フレキシブルデバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)光熱電変換素子の基盤技術の構築と発展を目的とし、1)微細PNパターニング技術、2)長期性能安定化技術、及び3)高密度アレイ化技術の開発に取り組む。 1)微細PNパターニング技術については、従来のドーピング液塗布法の欠点である微細性の解決に向け、独自のエアロゾルドーピング法及び装置を開発した。2021年度は当該装置の設計・発注を行い、開発した装置の基本能力を確認した。本装置を使用することでドーパントのエアロゾルの形成・粒径制御等を実現し、世界初となるエアロゾルドーピングを達成した。 2)長期性能安定化技術については、ドーピング済みのCNT膜を有機高分子膜でコーティングすることで物理/化学的刺激への耐性を高める技術の開発に取り組んだ。2021年度は有機高分子膜でコーティングしたCNT膜を作製し、大気下で保管した際の物性値の経年劣化の測定を開始したところである。実績報告書執筆時点においてはコーティングの有無で安定性に違いが表れ始めたところであり、2022年度も継続して安定性を評価することでコーティングが長期性能安定化に与える影響について評価する。 3)高密度アレイ化技術については、レーザーアブレーションを活用したCNT膜微細加工技術を開発した。レーザーのパルス幅、フルエンス、オーバーラップ率を変化させた際のCNT膜に対する加工品質を調査し、数マイクロメートル厚のCNT膜を数マイクロメートル間隔で高密度アレイ化させる高アスペクト比の微細加工技術を確立した。当該技術を用いて髪の毛よりも小さなマイクロモーションセンサーを開発し、極微サイズのモーションセンシングを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)微細PNパターニング技術については、2021年度はエアロゾルドーピング装置の設計・発注、および基本能力の評価を行う予定であり、当初の計画通りに進展している。 2)長期性能安定化技術については、2021年度は有機高分子膜でコーティングしたCNT膜を作製し大気下で保管した際の経年劣化の測定を開始する予定であり、当初の計画通りに進展している。 3)高密度アレイ化技術については、本来2022年度から始める課題であったが、計画を前倒しして開始することで2021年度中に微細加工技術を確立することができており、当初の計画以上に進展している。 研究成果としては、学術論文についてはApplied Physics Express誌への掲載および2022年4月末時点で1編投稿中、学会発表については5件(うち1件が招待講演)の成果を残すことができた。 以上の点から、2021年度は当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)微細PNパターニング技術については、ドーピング液の濃度・エアロゾルの粒子径・暴露時間等のドーピング条件に対し、ドーピングの位置分解能・強度・安定性について技術検証・性能評価を行うことで、完全新規の微細PNパターニング技術を構築する。 2)長期性能安定化技術については、有機高分子膜の最適なコーティング条件を解明し、大気下における感度劣化を10%以内に抑えたまま1年以上の長期性能安定化を達成する。 3)高密度アレイ化技術については、高感度高耐久テラヘルツセンサーパッチの開発と産業用品質検査応用に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の計画で購入予定であった超音波霧化ドーピング装置について、装置本体を別予算で購入することとなり、本予算では実験で使用する備品のみを購入した。繰り越し分の使用計画としては、超音波霧化ドーピング装置に用いる大型ドーピングチャンバーの購入等、当該装置の機能拡張に費やす予定である。
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