研究課題/領域番号 |
21K14504
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
中川 充 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (60848274)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金ナノワイヤー / 金ナノ粒子 / らせん構造 / キラリティ / 低分子ゲル化剤 / 粒子膜 / 透明導電性薄膜 |
研究実績の概要 |
新規に合成したアルキルアミンの分子結晶および脂肪酸/アルキルアミン複合体について金ナノワイヤーの合成を試みたところ、種々のナノ構造を有する金ナノワイヤーを合成することができた。得られるナノ構造はアルキルアミンの種類など、合成法によって変化させることができた。 また、合成したワイヤーに処理を施すことで形状を制御する方法についても検討した。より具体的には、金ナノ結晶のシードグロース合成を参考に、極細(直径3 nm)のらせん状金ナノワイヤーをシードとしたグロース処理を試みた。処理の際に添加する保護剤の種類、濃度について慎重に検討することでワイヤーの長さを変化させずに、ワイヤー径を段階的に3 nmから10 nm以上まで増加させることに成功した。ワイヤー径の増加率は、反応に用いた金前駆体の添加量や反応回数から精密に制御でき、シングルナノメートルレベルでの調節が可能である。さらに、金ナノワイヤーの光学特性を処理の前後で比較したところ、処理後の金ナノワイヤーは近赤外領域に特に強い吸光帯を示すことがわかった。これら光学特性の変化は金ナノワイヤーのアスペクト比の変化によって引き起こされたと考えられる。 金ナノワイヤー薄膜については、有機溶媒への抽出、精製、Langmuir膜の作製および転写といった工程を経ることで、エラストマー基板上に作製することができた。詳細な物性等は今後明らかにしてく予定であるが、今のところ粒子膜を積層させることで導電性や偏光特性を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目的は①鋳型となる材料の探索、②合成した金ナノワイヤーの基板への担持によるナノ粒子膜の作製、③様々な金属のナノワイヤーの合成、であった。 当初予定していた、①金ナノワイヤーの鋳型となる材料の探索は、新規に合成したアルキルアミン分子を用いることで、種々のナノ構造を有する鋳型の調製やそれを用いた金ナノワイヤーの合成について達成している。また、②ナノワイヤーの基板上への担持についても、水面上に展開した粒子膜の転写方法を確立しつつあり、ある程度予定通りに進んでいる。また、合成した金ナノワイヤーに後処理を施すことで形状を制御する新たな手法についても見出しつつあり、一部、当初の予定以上に進展した部分もある。 一方、③分子鋳型を用いた金属のナノワイヤーの合成については、AgやPd, Ptについて検討しているが、ナノワイヤーの合成に適した還元方法が見つかっておらず、やや進捗が遅れている。 以上のことから、現在までの進捗状況は予定よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新規に合成したアルキルアミンを分子鋳型に用いた金ナノワイヤーの合成については、添加する各試薬(金前駆体、還元剤、保護剤)や鋳型の濃度について詳細に検討し、ナノワイヤーの合成に最適な条件を見出していく。可能であれば他の化学構造を有するアルキルアミン分子についても、分子鋳型としての有効性を検討するとともに、その他鋳型として有用と考えられるナノ構造体についても評価を進めていく。最終的に、鋳型となる分子集合体に必要な要素を明らかにできるよう研究を進めていく。 種々の金属ナノワイヤーの合成が予定通り進捗していない点については、還元剤の種類によっては鋳型が崩壊してしまうことや、金属ナノワイヤーが生成する適切な還元速度を見いだせていないことが原因と考えられるため、今後は崩壊しにくい鋳型の探索や、より多くの種類の還元剤および還元条件について検討する予定である。 金ナノワイヤーの粒子膜の作製については、今後導入予定の成膜装置を用いて、より再現性の高い作製方法を見出すとともに、特性評価を進めていく予定である。特に、現在見出している導電性や光学特性を中心に調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究に必要な消耗品の購入および旅費に充当する予定である。また、本年度は予算の都合等で導入を見送った機器の購入に充当する予定である。
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