研究実績の概要 |
前年度において,膜平行電圧印加時の膜物性への影響を調査するために人工細胞膜系と蛍光イメージング系の融合システムの構築を行ったが,その際,膜平行電圧を印加するために膜支持体上に付加したTi電極上の電圧源との接触部が膜平行電圧の長時間印加に伴い酸化し,接触抵抗が増大することで膜平行電圧が膜内にかかりにくくなるといった問題に直面した.そこで本年度では,長時間の膜平行電圧印加に耐えうる膜支持体を作製するべく,酸化が生じないAuを電極とした膜支持体作製のためのプロセス開発を行った.新たに作製したAu電極付加膜支持体に対して長時間にわたって膜平行電圧を印加したところ,接触抵抗値が増大しないことが確認された.また,このAu電極付加膜支持体を用いて脂質二分子膜を問題なく形成出来ることが確認しており,現在,人工細胞膜蛍光イメージング系に展開しているところである.他方で,派生研究として,イオンチャネルの活性度合いをベースライン変動などの影響を受けやすい電流値データから定量的に評価するために,閾値などのパラメータを自動で設定することが可能な解析アルゴリズムの開発を行い,学術誌(Biophysical journal, 122(19), 3959-3975 (2023))にて発表した. 期間全体を通して,膜平行電圧印加によりイオンチャネル開孔が促進する作用原理を解明するための人工細胞膜蛍光イメージングシステムの基盤を構築することが出来た.このシステムを用いて,現在,膜平行電圧印加前後における膜内電界分布の調査・解析を進めている.他の様々な膜物性を調査するための蛍光イメージングシステムの構築も随時進めており,今後,膜平行電圧印加による膜物性変化のより詳細なデータが得られると期待される.
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