本研究の目的は,磁性ナノ粒子の交流磁場中における発熱量を予測可能とする実験式の確立と,その応用である.磁性ナノ粒子は交流磁場中で発熱する特性を有しており,この発熱特性はがん温熱療法,ドラッグデリバリー,マイクロシステム遠隔駆動への応用が期待されている.磁性ナノ粒子の発熱特性応用では,実際の発熱量を予測した粒子設計が重要となる.磁性ナノ粒子の発熱量理論式はRosensweigにより提唱されているが,実際の発熱量を正確に予測する式はまだない.そこで本研究では,理論式で考慮されていない磁性ナノ粒子間距離および磁気的相互作用の大きさが,発熱量にどのような影響を及ぼすのかを解明し,理論式を補正した実験式の導出と,その応用を目指した.本研究の目的達成は,医療・マイクロシステム分野での研究発展に資するだけでなく,磁性ナノ粒子磁気発熱の更なる応用発展にも資する. 本研究では,磁性ナノ粒子をシリカで被覆し,磁性ナノ粒子間距離を変化させた試料を調製し,粒子間磁気的相互作用の大きさの評価,および発熱量の評価を実施した.そして,粒子間距離増加に伴い粒子間磁気的相互作用は減少する傾向となること,粒子間磁気的相互作用の大きさの範囲により,粒子間磁気的相互作用と発熱量の間には正の相関または負の相関の双方があることを明らかにした.そして,磁性ナノ粒子の発熱と熱応答性ゲルの体積変化を利用したマイクロバルブへの応用について検討を行い,印加磁場強度により磁性ナノ粒子の発熱量を制御することでバルブ開閉挙動を制御できる可能性を確認した.
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