本研究は、光波長以下のナノ周期構造における光の反射現象を利用し、高感度な光学式磁場センサーの開発を目的とするものである。 最終年度は、電子線リソグラフィー法および電子ビーム蒸着法を用いて磁性体ナノ周期構造/誘電体ギャップ/磁性体を作製し、その光学特性および磁場センサーとしての性能について理論的・実験的に評価および検討を行った。前年度に実施した有限時間領域法による電磁界シミュレーションによって、磁性体/誘電体界面に電子の集団振動と光の結合した状態(表面プラズモンポラリトン:SPP)が励起された場合、光が誘電体ギャップ部に閉じ込められ、光と磁場の相互作用が増強されることが分かった。理論的検討に基づき、電子線露光量および真空蒸着レート等の作製プロセスを最適化し、ガラス基板上に磁性体ナノ周期構造と磁性体層が数十ナノメートルの誘電体ギャップで隔てられた構造の作製に成功した。作製した試料は、SPP励起に起因する深い反射率のディップを示し、電磁界シミュレーションから予想された光学特性と非常に良い一致を示した。また、試作したデバイスの磁場センシングの性能をクロスニコル配置光学系により評価した。作製試料に数mTオーダーの磁場を印加した際、SPP反射率ディップが生じた波長の近傍において、バルクの磁性体に比べ数倍程度の反射率変化が得られることを実験的に確認した。以上のように、磁性体ナノ周期構造により光と磁場の相互作用を増強させ、光学式磁場検出の高感度化を実現した。本研究に関連する成果を国際会議招待講演(META 2022)やOptics Express誌にて発表を行った。
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