研究課題/領域番号 |
21K14519
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大柳 洸一 岩手大学, 理工学部, 助教 (50881223)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スピン流 / スピントロニクス / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
スピントロニクス分野では、電子の持つ電荷の自由度に加えスピンの自由度をも利用した電子デバイスの開発が行われている。本研究の目的は、様々な形状・物性を示す磁性ナノ粒子を用いた新たなスピントロニクス材料の開発やそこで発現するスピントロニクス現象の開拓である。 本研究課題の目的達成のために本年度は以下の研究に取り組んだ。 (1) 磁性微粒子からなるバルク焼結体の作製を行なった。今年度は、物質・材料研究機構の内田グループの装置を利用し、強磁性金属Co2MnGa微粒子を様々な条件で焼結することで多結晶試料を作製し、その磁気熱電性能を評価した。その結果、多結晶体にもかかわらず、単結晶試料に匹敵する磁気熱電変換性能を示すことがわかった。 (2) ゆらぎの大きな常磁性体と金属薄膜からなる系において熱的にスピン流を生成する常磁性スピンゼーベック効果について実験的・理論的に研究をおこない、その原理を解明した。この知見は、強磁性ナノ粒子において発現する超常磁性状態の磁化を用いたスピンゼーベック効果の原理を理解する上で欠かすことができない重要な知見である。この成果はPhysical Review B誌に掲載された。 (3) 自己組織化を用いて強磁性ナノ粒子の薄膜化を試みた。その結果、10nm程度の強磁性ナノ粒子が薄膜化する条件を絞り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた薄膜状の磁性ナノ粒子試料の作製に関して、自己組織化の条件について知見が得られた。また、磁性ナノ粒子を用いたバルク焼結体の作製に成功し、大きな磁気熱電効果が現れることを見出した。さらに、ゆらぎの大きな常磁性体におけるスピンゼーベック効果のメカニズムを解明し、学術論文誌に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、磁性ナノ粒子の自己組織化を利用した薄膜状試料の作製に取り組み、そのスピン輸送の可能性を探る。磁性ナノ粒子を用いたバルク焼結体について、詳細な構造解析や組成分析を行うことで大きな磁気熱電効果が生じた原因の解明を行い、その成果を学術論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって出張計画に変更があったため。
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