研究実績の概要 |
地球内部の研究には高温高圧環境が欠かせない。高温高圧を実現する装置としてダイヤモンドアンビルセル(DAC)がある。ところが現状では、DAC内部の温度・圧力を高感度・高空間分解能でイメージングできるセンサが存在しないため、マントル組成や地殻の磁気モーメント含有量をより精緻に特定することは困難となっている。本研究では、圧力・温度センサとして~1,000 K、~100 GPa下で動作するダイヤモンド中の窒素・空孔欠陥(NVセンター)を用いて、DAC内の温度・圧力を高感度かつ高空間分解能で計測する手法を確立することを目指した。 一年目は、NVセンターの計測装置にDACを組み込み、常温下で常圧~数10GPaに至るまでの圧力計測を実施した。NVセンターの配置にあたっては、ナノダイヤモンドを封入する技術を採用した。本計測は常温で行われたため、その意義は先行研究の再現性の確認に留まるものであったが、我々が得た圧力感度の結果がこれらの先行研究のものと整合していたことから、高温環境への拡張に対する期待が高まった。 二年目は、窒素イオン注入によってDAC表面付近にNVセンター膜を生成した。そして前年度の高圧下での定点計測を拡張し、高圧下でのイメージングを実施した。その結果、ダイヤモンドキュレットの中心に向かって圧力が高まる様子など、DAC内の圧力分布をマイクロメートル・スケールで得ることができた。また、磁性物質を試料としてDAC内に封入し、磁場測定を行ったところ、高圧下での磁気相転移によって磁化が消失する様子を捉えることに成功した。さらには、DACに抵抗加熱機構を加えて200℃での高温計測も実施した。 今後は、温度感度および圧力感度を温度・圧力の2次元関数として、NVセンターの極限環境での物性をより包括的に明らかにし、地球科学の未解決課題に資するセンシング技術にまで昇華することを目指す。
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