研究課題
本研究では、光波の軌道角運動量を用いて電子スピンを操作することを目的とした。化合物半導体の二次元構造ではラシュバとドレッセルハウスの2つのスピン軌道相互作用が働き、その2つのバランスによって光励起スピンはさまざまな空間構造をとる。バンド間吸収の起きないCWレーザー光を制御光としてGaAs/AlGaAs単一量子井戸に照射した結果、スピンの空間構造がストライプ状から楕円状に変化した。発光励起スペクトルと発光スペクトルのエネルギーシフト量が光照射によって増加することから、量子井戸の対称性の変化が示唆されたが、磁場を印加した時のスピン時空間ダイナミクスから量子井戸の対称性によって変化するラシュバスピン軌道相互作用がおよそ30%増加していることが明らかになった。また、これまで単一光によるスピン生成には均一な偏光分布を持つ基本のガウシアンビームが用いられていたため、電子スピンの空間構造形成には電子スピンの拡散とスピン軌道有効磁場が必要であったが、トポロジカル光波の一種であるベクトル光渦を用いることで、スピンの空間構造を直接励起できることを実証した。軌道角運動量に起因して方位角依存の偏光周期構造を持つベクトル光渦を半導体量子井戸に照射してスピンを励起すると、円周上にスピン状態が2周期繰り返される空間構造が生成されることをカー回転角の空間マッピングによって観測した。スピン空間構造のひねりの数がベクトル光渦のトポロジカル数によって決まる数と同じことから、偏光周期構造がスピン構造として移されることが実証できた。偏光周期はトポロジカル数に反比例するため、ベクトル光渦のトポロジカル数を増加させると実際にスピンの空間構造周波数が増大した。光渦のトポロジカル数は任意の整数を取るため、トポロジカル数を増やすことによってスピン情報を高密度化することが可能になる。
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Physical Review Letters
巻: 130 ページ: 126701
10.1103/PhysRevLett.130.126701