本研究の目的は力学回転と磁性体中の角運動量の相互作用によって引き起こされるバーネット効果を用いたフェリ磁性体の角運動量補償温度の探索およびNMRを用いた角運動量補償物質の磁気ダイナミクス現象の測定である。 バーネット効果測定装置は室温用の高感度型および温度可変型の2台の装置を所有しており、それぞれ改良を行った。 室温高感度型には光ポンピング磁力計(感度<15fT/√Hz 3-100 Hz)を導入し、磁場測定感度が50fTまで向上した。実際のバーネット効果測定の際には試料回転時に発生する熱によって磁力計の値が変動することが明らかとなった。クライオスタットを導入し、センサーをクライオスタット外に設置することでこの問題を解決した。従来の装置より1.5桁程度感度が向上し1pT程度のバーネット効果による漏れ磁場変化を捉えられるようになった。温度可変装置に関しては試料回転に用いる窒素ガスをコンプレッサーで回収し、自作圧縮空気乾燥装置を通して循環させることで数日間の自動連続運転が可能となった。 希土類ガーネット試料(RIG: R= 希土類)や窒化マンガン(Mn4N)などのフェリ磁性体試料のバーネット効果測定を行い、Ho IGやErIGの角運動量補償温度を決定した。 HoIGやErIGに対してdサイトの57Fe信号のNMR測定を行った。スペクトル、T1およびT2の温度依存性を測定した。Ho IGでは核運動量補償温度でスペクトル強度が最大となった。これは角運動量補償温度での磁壁移動度の向上で説明される。一方で1/T1や1/T2の温度変化において角運動量補償温度での明確な異常は見られなかった。ErIGでは1/T2の異常が磁気補償温度や角運動量補償温度とは異なる温度で見られたが、この由来については現在検討中である。
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