研究課題/領域番号 |
21K14532
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河底 秀幸 東北大学, 理学研究科, 助教 (20757132)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多層膜固相エピタキシー法 / エピタキシャル薄膜 / アンチモン正方格子 / 希土類モノニクタイド |
研究実績の概要 |
今年度は、多層膜固相エピタキシー法を用い、異なる単結晶基板上に、La2O2Sbエピタキシャル薄膜の合成を試みた。単結晶基板としてはMgO (格子ミスマッチ: -3.6%)、SrF2 (-0.73%)、MgAl2O4 (0.63%)、GdScO3 (2.6%)、DyScO3 (3.1%)、NdGaO3 (5.5%)、LaAlO3 (6.4%)を用いた。結果としては、MgO(001)基板のみで単相かつ高結晶性のLa2O2Sb(001)エピタキシャル薄膜が得られたが、それ以外の基板では、La2O3やLaOFなどの不純物相の形成により、La2O2Sb(001)エピタキシャル薄膜を単相で得ることはできなかった。これらの結果から、多層膜固相エピタキシー法では、良好な格子ミスマッチだけではなく、前駆体多層膜との反応し難さという観点での基板の選定が重要であることがわかった。 さらに、上記のLa2O2Sbエピタキシャル薄膜の合成条件の最適化の過程で、1000℃近くの高温条件において、MgAl2O4(001)基板上に岩塩構造のLaSb(001)エピタキシャル薄膜の合成を見出した。高温条件に由来して高い結晶性が実現し、LaSb(001)エピタキシャル薄膜における室温の電気抵抗率は、単結晶バルク試料と同程度となった。LaSbなどの希土類モノニクタイドの薄膜合成では、ニクトゲンの蒸発のしやすさから、分子線エピタキシー法などによる直接成膜では、400℃程度が上限であり、蒸気圧の高い元素を含む物質の薄膜合成における多層膜固相エピタキシー法の有用性を示すことができた。 また、La2O2SbなどのRE2O2Pn (RE = 希土類元素; Pn = Sb, Bi)に関するこれまでの研究成果などをまとめたレビュー論文をiScience誌に出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多層膜固相エピタキシー法を用いて、異なる単結晶基板上へのLa2O2Sb薄膜の合成を試みることで、MgO(001)基板上で、単相かつ高結晶性のLa2O2Sb(001)エピタキシャル薄膜が実現することを見出した。また、多層膜固相エピタキシー法では、良好な格子ミスマッチだけではなく、前駆体多層膜との反応し難さという観点も成長基板の選定が重要であることがわかった。 さらに想定外の展開として、1000度近くの高温条件で、MgAl2O4(001)基板上に岩塩構造のLaSb(001)エピタキシャル薄膜の合成を見出した。得られたLaSb薄膜は高い結晶性を有し、室温の電気抵抗率は単結晶バルク試料と同程度となった。RE2O2Pn (RE = 希土類元素; Pn = Sb, Bi)に限らず、蒸気圧の高い元素を含む物質の薄膜合成における多層膜固相エピタキシー法の汎用性・有用性を示すことができた。また近年、LaSbなどの希土類モノニクタイドは、巨大磁気抵抗効果やトポロジカル物性などで注目を集める物質群であり、波及効果も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、La2O2Sbエピタキシャル薄膜の合成における単結晶基板依存性を明らかにし、昨年度の成果も併せて、La2O2SbとLa2O2Biのエピタキシャル薄膜の高品質化に関する合成条件の最適化が完了した。来年度は、これらのLa2O2SbとLa2O2Biのエピタキシャル薄膜に対し、化学ドーピング・極薄膜化を試み、超伝導や高移動度などの物性開拓をめざす。
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