本研究は、光触媒材料表面の欠陥と光触媒反応の関係性、特に水吸着反応との関係を明らかにするため、超高真空から準大気圧まで雰囲気制御が可能な環境制御型原子間力顕微鏡を開発し、原子レベルで光触媒表面、水分子の吸着、吸着した水分子が構成する水膜と光触媒界面を観測し、その構造を明らかにすることを目的として研究を行った。 初年度は、超高真空走査プローブ顕微鏡に大容量排気のターボ分子ポンプとドライポンプ、水分子導入用のバリアブルリークバルブを導入し、環境制御型超高真空走査プローブ顕微鏡の実験系の構築、立ち上げを行った。Si(111)やTiO2(110)試料を用いて、ポンプ稼働環境下における原子分解能計測が可能かどうかの確認を行った。 2年目は、研究代表者の所属異動に伴い、実験装置の移設と再立ち上げを行った。また、極低温超高真空走査トンネル顕微鏡を用いた実験により、光触媒材料であるアナターゼ型TiO2(101)表面における水分子の吸着を観測した。実験装置の都合上、低曝露量での観察に限られるが水分子の初期吸着サイトに関する知見を得た。 最終年度は、移設した環境制御型超高真空走査プローブ顕微鏡のメンテナンスと性能の評価を行った。移設によるダメージはなく、移設前と同様にポンプ稼働環境下でも原子分解能観測が可能であることを確認した。並行して行っていた極低温走査トンネル顕微鏡を用いた実験では、光触媒材料であるアナターゼ型TiO2(101)表面、SrTiO3(100)-(√13×√13)表面の2種類の材料において、水分子の初期吸着サイトの解析を行った。その結果、SrTiO3(100)-(√13×√13)表面において、優先的に水分子が吸着するサイトを特定した。 今後は成果の論文発表を行うとともに、本研究で構築した実験系と成果を足場に光触媒反応の研究につなげていこうと考えている。
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