深さ方向に複雑に構成された磁性体薄膜/多層膜は層間の相互作用に起因して多彩な磁性現象を示す。さらに磁性体の応用先として重要な記録媒体などにおいても多層膜構造を利用して有用な特性が実現されている。このような磁性体多層膜の磁性分布の深さ方向の直接観測による、薄膜中おける磁気構造の発現機構を解明するため、軟X線領域におけるXMCDを利用した反射率XMCD法による測定装置を分子科学研究所UVSOR BL4Bに設置し、テスト試料に対して実験を行った。 測定セットアップは2軸の反射率計となっており、それと独立して動く永久磁石による磁場印可機構が備わっており、試料に対して面内、面直方向の磁場をかけることができる。X線の検出はシリコンドリフトディテクタによって行えるようになっており、基板層からの蛍光などの影響を低減して測定を行った。磁場は0.5T程度であり、測定は室温で行った。試料の磁性層はCoFeBであり、キャップ層、下地層などによる振動構造がみられる。また同時に、XMCDに対応する差分であり、シミュレーションによる結果との一致が見られる。Co L吸収端にわたって同様の測定を行っており、XAS/XMCDスペクトル情報と反射率による構造情報との複合的な解析を行っている。反射率のXMCDを利用した先行研究はあるもののスペクトル情報まで立ち入っているものは少ない。これらの情報を結合した解析にも取り組んだ。
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