研究課題
本研究では、転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光を用いて、電気二重層トランジスタ動作下でのキャリア蓄積領域の軟X線吸収分光を達成する。これにより、強相関Ni酸化物のキャリアドープによる金属絶縁体転移の変調メカニズムを電子状態の観点から明らかにすることを目的とする。今年度は、デバイス構造作製に用いる薄膜そのものの転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収スペクトルの取得を試みた。具体的には、LaAlO3蛍光基板上にNdNiO3薄膜を作製し、転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光測定を行った。しかしながら、基板中のLaイオンの影響で目的のNiの吸収スペクトルを明瞭に得ることができなかった。そのため蛍光基板をLaイオンを含有しないものに選定し直し、今後はその基板上で薄膜を作製して吸収スペクトルの取得を試みる。さらに、電気二重層トランジスタ構造によるキャリアドープを起因とした金属絶縁体転移前後の電子状態を評価するために、温度変化させながら電圧印加して転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光測定を行うことができるクライオスタットと試料ホルダーの制作を開始した。来年度は、今年度に選定したYAlO3基板上に薄膜を作製して転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収スペクトルの取得を達成する。さらに、電気二重層トランジスタ構造に用いるイオン液体についても評価を行い、デバイス構造の作製を試みる。
3: やや遅れている
LaAlO3蛍光基板上にNdNiO3薄膜を作製し、転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光測定を行った。その結果、基板のLaイオンによる蛍光発光の影響が予想以上に大きく、評価したいNdNiO3薄膜中のNiイオンの吸収スペクトルがこれに埋もれてしまうことが明らかになった。そのため、この構造では目的を達成できないと判断し、Laイオンを含まない別の蛍光基板の探索を行って今後はYAlO3基板上にデバイス作製することに決定した。試料作製とは別に、温度変化させながら電圧印加して転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光測定を行うことができるクライオスタットと試料ホルダーの制作を開始している。
来年度は、今年度選定したYAlO3基板上にNdNiO3薄膜及びSmNiO3薄膜を作製し、転換可視蛍光収量法を用いた透過軟X線吸収分光測定を達成する。さらに、電気二重層トランジスタ構造の作製に必要なイオン液体の選定と塗布膜厚の決定を行う。この薄膜とイオン液体を用いて電気二重層トランジスタ構造を作製し、電圧印加に伴った金属絶縁体転移温度の変調を達成する。
今年度は新型コロナウイルスの影響で成果発表がオンラインとなり、さらにデバイス構造作製のための出張が叶わず、旅費が発生しなかった。来年度は、オンサイトでの成果発表とデバイス作製のための出張を予定している。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Crystal Growth & Design
巻: 22 ページ: 1116~1122
10.1021/acs.cgd.1c01076
Physical Review Materials
巻: 6 ページ: 035002(1)-(5)
10.1103/PhysRevMaterials.6.035002
巻: 5 ページ: L051001(1)-(6)
10.1103/PhysRevMaterials.5.L051001
Physical Review B
巻: 104 ページ: 085111(1)-(9)
10.1103/PhysRevB.104.085111
巻: 104 ページ: 115121(1)-(11)
10.1103/PhysRevB.104.115121
Chemistry of Materials
巻: 33 ページ: 7713~7718
10.1021/acs.chemmater.1c01877
巻: 5 ページ: 105002 (1)-(8)
10.1103/PhysRevMaterials.5.105002
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 1937(1)-(9)
10.1038/s41598-021-01333-z
Nature Communications
巻: 12 ページ: 7070(1)-(7)
10.1038/s41467-021-27327-z