キセノン試料中の不純物等がキセノンの三重点温度(約161.406 K)に与える影響を明らかにすべく、純度の異なる複数の高純度キセノン試料を用いて複数の三重点実現セルを作製した。実現セルをこれまで開発してきたキセノンの三重点実現装置に組み込み、キセノンの三重点を高精度に実現・評価した結果、試料中の不純物1 ppmあたり約0.04 mKキセノンの三重点温度が変化することを明らかにした。また、過去の報告から、キセノン中にキセノンに物性が近いクリプトンが混じっていると影響が生じると予想がなされている。本研究ではクリプトン濃度が異なる試料の三重点温度の比較も行った。結果、キセノンの三重点温度は試料中の不純物総量の濃度との相関は強いが、クリプトン濃度との相関は明確には見られなかった。これらの研究成果について、国際学会2件において発表を行い、proceedingsを1件投稿した。 一方で、水銀の三重点の代替候補のうちSF6の三重点(約223.556 K)、CO2の三重点(約216.591 K)の熱力学温度Tを、熱音響気体温度計(AGT)で高精度に計測することを目指している。これまでに、低温高圧下でAGTを稼働可能なシステムの作製を行ってきた。本年度はAGTを実際に273.16 Kから水銀の三重点温度(234.3156 K)までの低温で稼働し、熱力学温度の計測を行った。これらの成果について、論文を一件投稿した。
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