研究課題/領域番号 |
21K14545
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
上杉 謙次郎 三重大学, 地域創生戦略企画室, 助教 (40867305)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 顕微分光 / 深紫外発光ダイオード / 原子間力顕微鏡 |
研究実績の概要 |
III族窒化物半導体を用いた発光素子の中でも特にAlGaNをベースとした深紫外発光ダイオード(DUV-LED)は殺菌用紫外線光源として注目されているが、発光効率の低さが社会実装を妨げている。既存の手法では、電流注入動作時のLEDのミクロな発光効率分布を正確に評価できず、評価結果を素子設計と結晶成長条件へフィードバックすることが困難であることが一因であると考えられる。本研究は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた局所電流注入型の顕微エレクトロルミネッセンス測定手法を確立し、DUV-LEDの電流注入動作時の発光効率分布を、電流密度分布の影響なく高空間分解能で可視化することを目的とする。 2021年度は、試料表面へのAFMカンチレバーと電極プローブのアプローチ、および試料から発生する深紫外光の受光を両立し、かつスペースの限られたAFM筐体内に設置可能な測定系を設計し、製作に着手した。それと並行して、測定に用いるDUV-LED試料の作製および高品質化を行った。本研究で確立を目指す評価手法はDUV-LED試料の表面モフォロジーが発光効率分布像に対するアーティファクトとなる可能性があるため、評価手法の妥当性を確認するための測定には平坦性の高いDUV-LED試料が必要となる。AlNテンプレートのらせん転位密度を低減するとともに、有機金属気相成長の条件を制御して、らせん転位を起点として発生するスパイラル成長を抑制してDUV-LED試料の表面平坦性を向上させた。また、転位密度が低く圧縮応力が蓄積された下地結晶を用いた場合、DUV-LED最表面に形成されるp型GaNが容易に3次元成長して表面平坦性が低下することが確認されたが、成長条件を2段階に変化させることで、下地に左右されずに100 nm程度の薄膜で平坦なp型GaNを成長する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度中に測定系の構築完了を目指していたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて必要な機材の一部の調達が遅れている。これに関しては2022年度第一四半期中に調達の目途が立っている。一方で、測定に用いるDUV-LED試料の作製および高品質化に関しては2022年度の達成目標の一部を前倒しで実現できている。従って、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
必要な機材が揃い次第、測定系の構築を完了させ、顕微エレクトロルミネッセンス測定に着手し、発光効率分布を可視化するための測定条件を検討し確立する。電流密度を上昇させることで、発光強度が上昇し、測定感度が上昇することが期待できる。しかし、キャリア密度の上昇により、SRH型非輻射再結合の影響が減少するため、結晶欠陥密度に由来する発光効率分布は観察しにくくなると推測されるため、適正な測定条件の設定が必要になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて測定系構築に必要な機材の一部の調達が遅れているためであり、次年度早々に使用される予定である。
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