研究課題/領域番号 |
21K14547
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓磨 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 助教 (00882052)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大気熱プラズマジェット / 電子スピン常磁性共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究では、量産化が可能な元素かつ現在の電子デバイスの中核をなすシリコンとデバイス動作上、製造プロセス上相性のよいシリコンゲルマニウムSiGeを用いて、IoTデバイス動作に必要十分な電力を断続的かつメインテナンスフリーに供給する熱電デバイスの実現に向け、熱的・電気的特性を左右する粒界欠陥の制御・微視的構造の解明を目指す。 本年度は、当初計画であった申請者の所属研究室独自の熱処理法、大気熱プラズマジェット(TPJ)による非晶質SiGe膜の結晶化とその粒径制御を実施した。 これまで報告してきたTPJによる元素半導体SiおよびGe非晶質膜の結晶化と同様、SiGe非晶質膜においても組成比によらず結晶化できることを明らかとした。ラマン分光測定からSiGe非晶質膜の結晶化および、概ね非晶質膜堆積時の組成比どおりの結晶化膜が得られていることを確認した。光吸収を加熱原理とする従来の結晶化法とは異なり、TPJの高温熱流により結晶化を誘起する本熱処理法は、使用するレーザーの波長を組成比毎に変更するなどの必要がない、低プロセスコストな結晶化法であることを実証したといえる。 さらに、プラズマジェットの掃引速度を変調することで、熱処理後の平均結晶粒径を数ナノ~数マイクロメートルの範囲で単調に制御できることを、電子後方散乱回折法(EBSD)による粒径の評価を通して明らかとした。加えて、掃引速度の変調に伴い、微視的構造の異なる粒界の発現が示唆されたことから、「電子スピン常磁性共鳴」による常磁性欠陥の評価を試みた。粒径の減少に伴う粒界の増加量から期待される、欠陥起因のスペクトル強度よりも低強度のスペクトルを得たことから、電子スピン常磁性共鳴では検出できない欠陥の存在が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度(1年目)は当初計画(熱処理条件の変調による粒径制御)の達成に加え、2年目に行う予定であった粒界欠陥の評価に早々に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、引き続き粒界欠陥の評価に取り組む。電気的に活性な常磁性欠陥の測定を進め、マイクロ波パルスによる微視的構造の決定に取り組むと同時に、当初の予定を前倒しで実施できていることから、過渡容量法(DLTS)の実験系を構築し電気的に活性な非磁性な欠陥の測定を追加することで、より詳細な欠陥の同定・そしてそれらの結果に基づく、電気的特性への影響の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスに伴い、参加予定の学会の延期およびオンライン化に伴い差異が生じた。次年度に延期された学会への参加経費として使用を検討している。
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