研究課題/領域番号 |
21K14548
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
近藤 圭祐 宇都宮大学, 工学部, 助教 (80878413)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / 集積光デバイス / 光パルス計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、シリコンフォトニクス技術を用いて製作するチップサイズの光相関計を応用して、光パルスの振幅と位相を測定する技術の実証を目指している。 この目標に向けて令和3年度は、まず、過去に製作したチップサイズ光相関計と市販の波長可変フィルターを用いて、パルス振幅・位相測定の動作実証を目指した。チップサイズ光相関計は振幅、位相測定に必要な相関波形の取得に用いる。一方、波長可変フィルターは被測定光パルスの波長成分を抽出するのに用いる。パルス振幅・位相測定においては、相関波形の取得とフィルタリング波長の走査をそれぞれ数十回ずつ繰り返す必要があるので、これらの自動制御が必要不可欠であった。光相関計チップによる相関波形取得をコンピュータ制御するために電子回路基板を設計、製作した。製作した電子回路基板に光相関計チップを実装し、相関波形の自動取得に成功した。さらに相関波形取得と連動して波長可変フィルターを制御するめに、プログラム制御可能な波長可変フィルターを購入し、連制御プログラムと制御系を構築した。パルス測定の制御系が完成したので、現在は光パルスを光相関計チップに入力するための光学系を構築している。この光学系が構築中であるため、令和3年度中の光パルス振幅・位相測定の実証までは至らなかったが、近いうちに光学系も構築できる見通しである。 以上と並行して、チップ集積可能な波長可変フィルターの研究も行った。波長フィルターの構造にはいくつかの種類があるが、それぞれの特性を鑑みてマイクロリングを有力候補として選定した。本年度はマイクロリングフィルターの諸特性を、時間領域有限差分シミュレーションを用いて解析し、解析結果を踏まえて設計、製作を行った。現在は、製作したマイクロリングフィルターを評価中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究内容は、概ね当初の研究計画に沿って進捗を得ることができた。まず、光相関計チップによる相関波形取得を自動制御するために、制御用電子回路の設計、製作と制御プログラムの作成が必要であり、これらは順調に実施することができた。次に、市販の波長可変フィルターと光相関計チップを連動させる制御系と制御プログラムの作成に取り組んだ。ここで、波長可変フィルターと光相関計制御用電子回路では制御に使えるインターフェースやプログラムが異なっていたため、連動させるのに試行錯誤が必要になり、完遂には予想よりも時間を要した。光パルスの振幅・位相測定の実証実験に向けては、最後に、光相関計チップと波長可変フィルターを組み合わせた光学系の構築が必要であるが、自動制御系の構築に時間を要したこともあり、現在は光学系の構築の途中である。この光学系の構築は近く完了する見通しであるため、できるだけ早く実証実験に取り組みたいと考えている。チップ集積可能な波長可変フィルターの研究については、当初の研究計画通り、フィルターの構造の選定、時間領域有限差分によるフィルター特性のシミュレーション解析、フィルターの設計、製作を行うことができた。以上より、本研究課題の進捗状況については概ね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、令和3年度に計画していた光相関計チップと市販の波長可変フィルターを用いた光パルス振幅・位相測定の実証実験が未実施であるので、これに早期に取り組む予定である。次に、製作したマイクロリングフィルターの評価実験を行う。具体的にはフィルター周波数特性とフィルタリング波長の走査の精度を実験により評価する。次にチップ集積された光相関器とマイクロリングフィルターを用いて、オンチップでの振幅・位相再生の実証を目指す。光相関計の相関波形計測とマイクロリングフィルターの走査を自動制御するために、再び制御用電子回路基板を製作する。製作した電子回路基板に光デバイスチップを実装し、パルス振幅・位相測定実験を行う。実験を通してデバイスの感度、測定スループット、スペクトル分解能、位相再生確度などを評価し、新たな応用の実現可能性を検討する。
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