本研究課題では、シリコンフォトニクスを用いて製作した光相関計を応用し、光パルスの振幅と位相を測定する技術の実証に取り組んだ。昨年度はシリコンフォトニクス光相関計と市販の波長可変フィルターを用いてパルス振幅・位相測定の実証を目指し、その光学系の構築までを遂行した。令和4年度はまず、構築した光学系を用いてピコ秒パルスの振幅と位相の測定を実験した。結果、パルスの位相情報を測定することに成功し、パルスに与えられた周波数チャープの情報を正確に観測することができた。ただし、振幅の時間幅とスペクトル幅には約120%の誤差が生じてしまった。数値計算シミュレーションでこの原因を追及したところ、波長可変フィルターの伝達関数の通過特性が矩形型であることが原因とわかった。同シミュレーションによって、ローレンツ関数型の通過特性のフィルターを用いれば誤差を限りなく小さくできることもわかった。この通過特性は単純な光共振器構造で現実的に実現可能である。本研究によってシリコンフォトニクス光相関計を用いて光パルスの位相を含む詳細な波形の測定の基本原理が示され、本研究課題にとって重要な成果が得られた。本成果は学術論文誌1件 (IEEE Photonics Technology Letters誌) に掲載予定である。 さらに令和4年度は、シリコンフォトニクス光相関計と波長可変フィルターを一つのチップに一体集積したデバイスを製作し、その動作実証にも取り組んだ。ここでは波長可変フィルターとして、集積型ヒーターによって波長制御可能なマイクロリングフィルターを用いた。製作したデバイスによってピコ秒パルスの波形測定に成功し、世界初となる完全オンチップの光パルス波形測定器を実証できた。ただし、前述と同様に、時間幅とスペクトル幅の誤差があり、この解消が今後取り組むべき課題である。本成果は国内学会1件で発表された。
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