研究課題
溶融塩溶媒に添加した核分裂生成物の安定性を評価するために、フッ化物溶融塩中での添加元素の酸化還元電位を数値解析による評価可能性について検討した。密度汎関数理論計算(DFT)に基づく分子動力学計算により、LiF-BeF2溶媒へ核分裂生成物元素の単体とそのフッ化物をそれぞれ添加した系の全エネルギーを計算し、それらとフッ素ガスの自由エネルギーの値から、標準フッ素電極を基準とする各元素の酸化還元電位を評価した。評価手法の妥当性確認のため、実験値のあるCrとFeについても同様に評価したところ、Crでは±0.5 Vの範囲で一致したが、Feでは1.5 V以上の差が見られた。DFTに基づく分子動力学計算ではその計算コストからシステムサイズを大きくすることができず、評価結果に大きなばらつきが見られたことが原因の一つであると考えられる。今後、評価結果の妥当性について、核分裂生成物元素を用いた実験測定との比較が必要である。核分裂生成物を添加した溶融塩の諸物性予測手法確立に向け、その一つとして古典分子動力学計算による粘度評価を実施した。溶媒候補の一つであるBeF2は、そのガラス様の構造から粘度が極めて大きく、流動設計において大きな問題となる。これに対し、添加した核分裂生成物がどのように影響を及ぼすかを数値解析により評価した。ZrF4のような大きな価数をもつ塩とBeF2を混合した場合、一般的なLiF-BeF2よりも高い粘度を示した。Zr-Fの結合およびBe-Fの結合それぞれの緩和時間が長いことが高粘度の原因となることが示唆された。一方、同じ核分裂生成物であるCsをBeF2と混合した場合、その粘度は大きく低下するという結果が得られたことから、アルカリ金属フッ化物のような1価の塩がBeF2の粘度低下に寄与することが明らかとなった。これは今後の核変換ターゲットの材料設計において有用な知見である。
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Fusion Engineering and Design
巻: 203 ページ: 114456~114456
10.1016/j.fusengdes.2024.114456
Annals of Nulcear Energy
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