研究課題/領域番号 |
21K14563
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金崎 真聡 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90767336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固体飛跡検出器 / 画像処理 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
レーザー駆動イオン加速実験において、最も信頼性の高い検出器として用いられている固体飛跡検出器は、イオンの飛跡をエッチピットとして光学顕微鏡下で可視化する。エッチピットの開口部形状を解析することで、入射エネルギーや核種といった入射粒子に関する詳細な情報を得ることができる。しかしながら、エッチピットの解析には膨大な時間と手間を要するため速報性が薄い。さらに、結果が解析技術の習熟度に依存するため、得られた情報の精度を保証することが困難である。そこで、本研究ではエッチピットの解析効率化を目指し、機械学習を導入したエッチピットの自動解析プログラムの作成を行っている。 今年度は、エッチピットの自動識別が可能なアプリケーション開発を行った。強アルカリ溶液によるエッチング後の固体飛跡検出器表面は、表面荒れや水垢等によるノイズをエッチピットと誤認識する場合がある。そこで、エッチピット開口部形状が円または楕円形状であるという特徴をとらえて認識させるプログラムを開発した。具体的には、オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリであるOpenCVで、Hough変換による画像処理で円を認識させることにより、エッチピットとノイズを識別可能で、且つ、エッチピット開口部の位置や半径を取得可能なプログラムを作成した。また、光学顕微鏡に接続されたカメラから取り込まれる映像に対して、Pythonで作成したプログラムをループさせることで、コンパクトデジタルカメラにおける顔認識機能のように、エッチピットをリアルタイムに認識・追跡可能なプログラムとした。さらには、開発したプログラムを、ユーザーインターフェースを備えたアプリケーションとすることで、解析初心者でもエッチピット解析に必要な情報を瞬時に得られるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標の一つであるエッチピット解析精度の保証という面においては、エッチピットとノイズの識別が非常に重要である。光学顕微鏡を操作しながらリアルタイムにエッチピットを追従でき、また、解析に必要なデータが得られるプログラム開発を完了した。さらには、ユーザーインターフェイスを備えたアプリケーション化まで完了している点においては、初期のプログラム作成は順調に完了したと考える。 一方で、エッチピットの開口部形状から計測される半径を用いて入射エネルギーを評価する際、校正実験で得られたデータ等と比較する必要がある。そこで、校正実験として加速器及び線源を用いたイオン照射を行い、解析に必要なプロトン及びアルファ線のデータを取得した。しかしながら、校正実験では入射エネルギーに対して得られるデータが離散的であるため、エッチピットの開口部形状から入射エネルギーを推定するためには、データの補完もしくは回帰分析を行う必要がある。即ち、校正実験で得たデータを教師信号とした機械学習の導入が不可欠であると考える。 今年度は、エッチピット識別のリアルタイム性に注力していたため、開発したプログラムに機械学習を取り入れることができなかった。入射エネルギーの推定などに対する解析精度の向上、及び、解析時間の大幅な短縮という観点からも機械学習の導入は不可欠であると考えているため、進捗状況は、おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、取得したプロトンとアルファ線のエッチピットを教師データとした機械学習プログラムを作成する。具体的には、数種類のエネルギーで照射したイオンが形成するエッチピットを学習させ、サポートベクター回帰を行うことで、同イオン種の既知もしくは未知のエネルギーのイオンが形成したエッチピットの入射エネルギー推定を行う。一般に、エッチピット開口部の直径は、入射エネルギーに依存しており、高エネルギーほど阻止能が低いため小さなエッチピットが形成される。そこで、エッチピット径をパラメータとした回帰分析を行うことで、入射エネルギーの推定が可能であると考える。一方で、入射エネルギーの推定には、これまで用いられてこなかったエッチピット中心部のグレースケールもパラメータに加えることで、解析精度の向上を試みる。加えて、これまでに人間が着目していないパラメータも利用する可能性があるディープラーニングによるエッチピット解析プログラムも作成し、解析精度の向上に寄与するか調べる。 校正用に取得しているイオン種は、現在のところプロトンとアルファ線であるが、より閾値の高い固体飛跡検出器による重イオンの検出も視野に入れて、加速器による重イオン照射を行うことで教師データを充実させる。 これにより、白色のエネルギースペクトルで複数のイオン種が加速されるレーザー駆動イオン加速実験において、固体飛跡検出器上に形成されるエッチピットのイオン種と入射エネルギーが瞬時求められるプログラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等が新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンライン開催となり、旅費使用額が想定よりも少なかったため次年度使用額が生じた。次年度、学会参加及び実験参加のための旅費として使用する予定である。
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