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2022 年度 実施状況報告書

固体飛跡検出器を用いた高強度レーザーによるイオン加速メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K14563
研究機関神戸大学

研究代表者

金崎 真聡  神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90767336)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード固体飛跡検出器 / ハフ変換 / レーザー駆動イオン加速
研究実績の概要

電子線やX線がイオンと同時発生するレーザー駆動イオン加速実験において、イオンのみをエッチピットとして検出可能な固体飛跡検出器は最も信頼性の高い検出器として用いられている。エッチピットの開口部形状を解析することで、入射エネルギーや核種といった入射粒子に関する詳細な情報を得ることができる。しかしながら、エッチピットの解析には膨大な時間と手間を要するため、それらを軽減する必要がある。
今年度は、量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所の高強度レーザーJ-KAREN-Pにおいて、クラスターターゲットを用いたイオン加速実験を実施した。イオン検出器として、固体飛跡検出器CR-39及びトムソンパラボラスペクトロメータを用い、結果を比較した。固体飛跡検出器の解析には、昨年度に開発した光学顕微鏡下でリアルタイムにエッチピットを認識可能なプログラムを利用し、速報性に優れた解析を実施することで、CR-39のイオン計測結果は実験方針を定める上で重要な指針として活用された。しかしながら、粒子数が少なくなる高エネルギー成分については、ノイズとの識別が困難なケースが出てきた。これを解決するためには、機械学習による分類では不十分であり、エッチピットの成長挙動を追跡する必要が出てきた。そこで、エッチング前後のエッチピットに対して、同一粒子が形成したものを検出するプログラムを開発した。今後は本プログラムの精度を向上させることにより、より詳細なエネルギースペクトルを明らかにすることが可能になると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、レーザー駆動イオン加速実験が連続して実施されたため、それらに参加し、固体飛跡検出器を用いて実際にイオンの計測を実施した。実験では、水素クラスターをターゲットとし、高強度レーザーとの相互作用により加速される陽子線のエネルギースペクトル計測及び空間分布計測を行った。エネルギースペクトル計測では、固体飛跡検出器CR-39と適切な減速材を組み合わせて積層したものを用い、エッチピットが確認されたCR-39に対し、昨年度開発したプログラムを適用して、最高エネルギー等の情報を速報として報告し、実験の方針を決める際の指針として利用した。即ち、昨年度開発したプログラムにより、解析時間の短縮に成功し、固体飛跡検出器によるイオン計測の速報性が向上したと言える。
一方で、エッチピット解析用アルゴリズムの開発は、昨年度、リアルタイム性を有するプログラムを開発したため、今年度は、既に撮像されたエッチピット画像に対する画像処理プログラムの開発に取り組んだ。これについては開発途中ではあるが、エッチング前後のエッチピットを追跡し、これまでよりも手間なく短時間で成長挙動を追跡可能なプログラムを作成しており、イオンによるエッチピットと表面荒れ等によるノイズの識別が、より正確に行うことが可能となると考えられる。

今後の研究の推進方策

今年度実施されたレーザー駆動イオン加速実験において、複数の解析すべき試料が得られた。その中で、エッチピットとノイズの識別が重要な課題として浮上した。レーザー加速イオンの一般的な特徴として、幅広い白色のエネルギースペクトルを有するが、高エネルギー成分ほど粒子数が少ない。しかしながら、加速されたイオンの最高エネルギーは、イオンの加速メカニズムを解明する上で重要な情報を有しており、ノイズとの差別化が必要となる。今年度の実験でも同様の状況が発生しており、機械学習によるノイズとの識別に加えて、エッチピットの成長挙動を明らかにする必要が出てきた。
エッチングと顕微鏡観察を繰り返し行う多段階エッチングでは、通常、エッチピットの成長挙動を追跡し、その飛程や感度を導出するが、ノイズとの識別にも用いることができる。しかしながら、各回のエッチング後に同じ粒子が形成したエッチピットを探す必要があり、大量のエッチピットに対して解析を実施するのは現実的ではなかった。しかしながら、今年度開発に着手したプログラムでは、画像上のエッチピットの位置を単純化することで、エッチング前後のエッチピットについて成長挙動を求めることに成功している。今後は、このプログラムを改良し、より大面積に形成されたエッチピットに対しても成長挙動を追跡可能とする。これにより、ノイズとの識別力を向上させ、より正確なエネルギースペクトルを求めることを可能にする。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Measurement method for laser-accelerated multi-hundred-MeV protons utilizing multiple Coulomb scattering in an emulsion cloud chamber2023

    • 著者名/発表者名
      Asai Takafumi、Inoue Chihiro、Jinno Satoshi、Kitagawa Nobuko、Kodaira Satoshi、Morishima Kunihiro、Fukuda Yuji、Yamauchi Tomoya、Kanasaki Masato
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 62 ページ: 016506~016506

    • DOI

      10.35848/1347-4065/acac59

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 固体飛跡検出器を利用したレーザー加速イオンの特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      金崎真聡
    • 雑誌名

      ぶんせき

      巻: 537 ページ: 315-319

  • [学会発表] 水素クラスターターゲットと高強度レーザーとの相互作用による準単色multi-MeV陽子線の繰り返し発生2022

    • 著者名/発表者名
      浅井孝文、他32名
    • 学会等名
      日本物理学会2022年秋季大会
  • [学会発表] クラスターターゲットと高強度レーザーの相互作用によるMeV級イオンの繰り返し発生2022

    • 著者名/発表者名
      金崎真聡、他32名
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] CR-39(TechnoTrak)に対する陽子及び重陽子の応答特性2022

    • 著者名/発表者名
      望月政一郎、浅井孝文、鍛冶賢志、田邊寛之、井上千裕、山内知也、福田祐仁、金崎真聡
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] リアルタイムエッチピット判別アプリケーション開発2022

    • 著者名/発表者名
      田邉寛之、浅井孝文、山内知也、金崎真聡
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 2022 年に高強度レーザーJ-KAREN-Pにて行われたイオン加速実験の概要2022

    • 著者名/発表者名
      ・金崎真聡、浅井孝文、鍛治賢志、田邉寛之、井上千裕、望月政一郎、尾崎玲於奈、豊永啓太、前川馨、Sergey Ryazantsev, Tatiana Pikuz, 桐山博光、山内知也、福田祐仁
    • 学会等名
      第35回固体飛跡検出器研究会
  • [学会発表] 高強度レーザーと水素クラスターの相互作用領域から発生する第二高調波のイメージング2022

    • 著者名/発表者名
      豊永啓太、浅井孝文、井上千裕、鍛治賢志、望月政一郎、尾崎玲於奈、前川馨、山内知也、金崎真聡、福田祐仁
    • 学会等名
      第35回固体飛跡検出器研究会
  • [学会発表] 高強度レーザーと水素クラスターの相互作用におけるレーザープレパルスが陽子線加速に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      前川馨、浅井孝文、鍛治賢志、井上千裕、望月政一郎、尾崎玲於奈、豊永啓太、山内知也、福田祐仁、金崎真聡
    • 学会等名
      第35回固体飛跡検出器研究会
  • [学会発表] 固体飛跡検出器 CR-39 によるレーザー加速高エネルギ―陽子線のエネルギースペクトル計測2022

    • 著者名/発表者名
      尾崎玲於奈、浅井孝文、鍛治賢志、井上千裕、望月政一郎、豊永啓太、前川馨、山内知也、福田祐仁、金崎真聡
    • 学会等名
      第35回固体飛跡検出器研究会

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公開日: 2023-12-25  

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