電子線やX線がイオンと同時発生するレーザー駆動イオン加速実験において、イオンのみをエッチピットとして検出可能な固体飛跡検出器は最も信頼性の高い検出器として用いられている。エッチピットの開口部形状を解析することで、入射エネルギーや核種といった入射粒子に関する詳細な情報を得ることができる。しかしながら、エッチピットの解析には膨大な時間と手間を要するため、それらを軽減する必要がある。 今年度は、エッチピットの成長挙動を自動で追跡するプログラムを完成させた。エッチピット成長挙動の追跡には、エッチング前後に光学顕微鏡下で同一のエッチピットを探し出し、その半径を計測する必要がある。そこで、広領域画像取得顕微鏡を使用し、エッチング前後のエッチピットの位置情報を取得し、その位置情報を基にマッチングを行うことで、手動による解析と変わらない精度でエッチピットの成長挙動を追跡可能なプログラムを作成した。これにより、エッチピットの解析時間が大幅に短縮された。また、本研究で開発したプログラムを神戸大学タンデム加速器にて照射した陽子線と重陽子線のエッチピット解析に適用した。その結果、手動解析で得られていた結果と同様に、入射時のエッチピット半径が同じ場合でも、飛程終端部の成長挙動が異なることが明らかとなり、陽子線と重陽子線の弁別に開発したプログラムが適用可能であることが分かった。 研究期間全体を通して、光学顕微鏡下においてリアルタイムでエッチピットを認識可能なプログラムと、エッチピットの成長挙動を自動化するプログラムを開発し、固体飛跡検出器におけるエッチピット解析の時間と手間を軽減することに成功した。
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