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2021 年度 実施状況報告書

微生物を含む液中における二酸化ウラン表面の微細構造変化

研究課題

研究課題/領域番号 21K14568
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

北垣 徹  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉環境国際共同研究センター, 副主任研究員 (30770036)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード液中その場観察 / 微生物 / 細菌 / ウラン / 溶解 / 脱窒菌 / 原子間力顕微鏡 / ジルコン
研究実績の概要

二酸化ウランの水中への溶解速度は実験的に評価されているが、実環境の溶解速度との乖離が課題となっている。これは微細な表面構造の変化や微生物の寄与を考慮していないこと等が原因と考えられる。本研究では、各種溶液中での二酸化ウランの微細な表面構造の変化や、微生物1個体単位での二酸化ウランとの相互作用を、原子間力顕微鏡を用いて液中その場観察すると共に、電子顕微鏡や放射光分析等により局所的な化学状態の変化を同定することにより、 微生物を含む液中の二酸化ウランの微細な表面構造や化学状態の変化を把握し、その速度を評価する。
令和3年度は、液中その場観察技術を用いて化学的に安定なジルコンの液中での微細な表面の凹凸の変化を測定し、その速度を評価した。これより、液中その場観察により化学的に安定なジルコンにおいても精緻に表面の凹凸の変化の速度が評価可能であることを確認した。また、溶解後の試料表面の析出により、表面の凹凸の変化の速度と溶液中の元素濃度変化から得られる溶解速度が異なることから、析出を伴う溶解現象の評価には表面深さ方向の形状及び化学変化が重要であることが示された。このため、同様の溶液に浸漬したジルコン粒子表面近傍の形状及び化学変化を透過型電子顕微鏡を用いて分析し、水酸化ナトリウム溶液中では溶解したジルコンが結晶化し、表面近傍にポーラスな層構造が形成されることを確認した。
二酸化ウランの溶解へ寄与する微生物としては、硝酸を還元分解する脱窒菌が知られる。液中その場観察に用いる脱窒菌を採取するため、窒素系肥料を多量に使用する水田の用水路や河川等から8種類の環境サンプルを採取した。窒素源として硝酸イオンのみを含む微生物用の液体培地を調整し、脱窒菌のみを残すため継代培養を繰り返した。寒天培地から脱窒菌19株の単離に成功し、種判別解析により細菌種を特定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では液中その場観察等により二酸化ウランの溶解速度を評価予定であり、測定方法の妥当性の確認として、令和3年度は放射性物質である二酸化ウランの代替物質としてジルコンを用いて液中その場観察を実施し、表面の凹凸の変化の速度が評価可能であることを確認した。ジルコンは二酸化ウランより化学的に安定であり、溶解速度も遅いが、凹凸の変化の速度が問題なく評価できたため、二酸化ウランにおいても同様の手法を用いて速度評価が可能と考える。以上より、液中その場観察の測定対象を二酸化ウランに置き換えることで問題なく表面の凹凸の変化の速度が評価できる見通しである。
また、二酸化ウランの溶解に寄与する微生物は種々知られているが、代表的な微生物として19株18種の脱窒菌の分離に成功した。今後は本培養方法をさらに発展させ、固体の酸化反応によりエネルギーを獲得できる微生物の分離を試みる。
以上より、本研究は順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

今後は原子間力顕微鏡を用いた二酸化ウランの液中その場観察、表面の凹凸の変化の速度の評価を実施する。これは、これまで測定対象としていたジルコンを二酸化ウランに置き換えるのみで実施可能であるため、問題なく遂行できると考える。また、今後微生物による二酸化ウランからの電子の引き抜きの有無について検討するため、液中その場観察と同時に液中の二酸化ウランの電位測定を可能とする。
二酸化ウランの溶解に関する微生物の寄与として、電子の引き抜きによる二酸化ウランの酸化、溶解については知られていないが、鉄酸化細菌等の化学独立栄養細菌がこれを行なっているとすれば、貧栄養下においても二酸化ウランの酸化によりエネルギーを獲得してこれらの微生物が増殖し、固体として固定化された二酸化ウランの溶解が加速的に進み、人体に有害なウランの拡散が進むことが懸念される。このため、人形峠等のウラン鉱山跡において地下水試料を採取し、電気培養により電極から電子を引き抜く性質を有した化学独立栄養細菌の分離を試みる。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた主な理由は出張旅費がほぼ未使用であったことに起因する。これは新型コロナウイルスにより出張が制限されたことによる。R4年度は出張の制限がある程度緩和されると考えられることから、昨年度実施できなかった人形峠等への出張を行うと共に、さらなる余剰分については実験用の消耗品の購入に用いる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Dissolution and precipitation behaviors of zircon under the atmospheric environment2022

    • 著者名/発表者名
      Kitagaki Toru、Yoshida Kenta、Liu Pengfei、Shobu Takahisa
    • 雑誌名

      npj Materials Degradation

      巻: 6 ページ: 13

    • DOI

      10.1038/s41529-021-00214-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evaluation of the dissolution behavior of zircon using high-resolution phase-shift interferometry microscope2021

    • 著者名/発表者名
      KITAGAKI Toru
    • 雑誌名

      Journal of Nuclear Materials

      巻: 557 ページ: 153254~153254

    • DOI

      10.1016/j.jnucmat.2021.153254

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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