研究課題/領域番号 |
21K14570
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
Yu Juhyeon 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所研究所 核融合炉材料研究開発部, 研究員 (20825757)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロ引張 / タングステン |
研究実績の概要 |
2021年度ではマイクロ引張試験結果に影響を及ぼすことが予想される3つの要因に対して、その影響を明らかにすると共に自己イオン照射による照射硬化評価への適用性を検討した。 まず、試験結果に影響を及ぼす3つの要因として、試験片の形状(肩部のラウンド加工)、タングステン材の内部に存在する欠陥(空隙)、試験片のゲージ部に存在する結晶界面についてそれぞれの影響を明らかにした。試験片のゲージ部に欠陥を有する試験片を用いた結果では、最大強度及び全伸びが大幅低下することを確認した。この結果は、タングステンの降伏応力以下で欠陥を原因とする破壊が発生していることを示しており、多くの欠陥を有するバルクタングステンの脆性破壊や低い最大強度を説明することができると考えられる。試験片の肩部にラウンド加工を導入した結果では、ラウンド加工のない試験片より強い最大強度を示すことを確認した。この結果は、マイクロ引張試験でも試験片の肩部に応力が集中しており、ラウンド加工を導入することで応力集中を防ぐことができると考えられる。試験片のゲージ部に界面を有する試験片では、界面を有していない試験片と最大強度及び全伸びに対する有意な違いは認められなかっあ。特に界面を有する試験片でも界面で破壊されず、延性破壊を示した。この結果では、タングステンは界面強度が高く、結晶内部で発生するスリップなどで延性破壊を示す材料であると考えられる。 自己イオン照射による照射硬化評価への適用性検討のためには、高崎量子応用研究所のTIARAにて自己イオン照射した純タングステンを用いた。試験結果では、最大強度はナノインデンターを用いた評価の結果と同じ傾向を示しており、適用は可能と考えられるが、全伸びは照射量や照射温度などと関係せず、マイクロ引張試験の変形メカニズムの解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度ではマイクロ引張試験結果に影響を及ぼす要因に対してその影響を明らかにした。この結果を元にマイクロ引張試験の試験片作製条件を定めることで、本研究の課題の1つである試験片作製手順の提案及び試験片作製時に発生するバラツキの要因除去が可能になると考えられる。また、超微小領域での材料評価が必要な分野としてイオン照射材の照射硬化評価への適用ができる見込みを得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、純タングステンの超微小領域での延性変形を支配する要因を明らかにするために、単結晶タングステンを用いた変形挙動解析を行う。また、画像データ解析手順を提案することから、作業効率化及びエラー低減を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延に伴い実験や出張、物品購入、学会などの計画に狂いが生じたため、次年度使用額が生じた。 当初計画していた実験などのため必要である試験片などの購入について、次年度購入分と合わせて進めている。また、次年度からは出入国制限の緩和により国際学会などへの参加も期待される。
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