研究課題/領域番号 |
21K14575
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱中 晃弘 九州大学, 工学研究院, 助教 (20758601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 石炭地下ガス化 / UCG / AE計測 / 低品位炭 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画通り,九州大学において石炭供試体の温度上昇によるAE計測実験を実施した。本実験では,高品位炭の瀝青炭と低品位炭の褐炭の石炭試料を1辺40 mm程度のブロック状に成形し,石英ヒーターの温度を50 ℃から550 ℃まで5分ごとに50 ℃ずつ段階的に加熱していく実験と,20分間で550 ℃まで急激に加熱する実験を実施し,AE発生数などを計測した。また,加熱後の石炭試料を目視観察およびX線CTスキャンを用いて内部構造を評価した。 一連の実験より,高品位炭および低品位炭のどちらとも150 ℃から 300 ℃においてAE のイベント数が増加した。これは,熱膨張や水分蒸発により石炭内部で破壊活動が生じたためであると考えられる。また,450 ℃から500 ℃においてもAEのイベント数は増加した。同温度帯において石炭からガスの発生が確認されていたことから,このAEイベントの増加は石炭のガス化による影響により石炭内部で破壊活動が生じたためであると考えられる。さらに,高品位炭の結果と低品位炭の結果を比較すると,低品位炭の方でより多くのAEイベント数が計測された。これは,実験後の目視観察より低品位炭では多数のき裂が確認でき,高品位炭では軟化溶融が生じていたことや,加熱後の石炭のX線CTスキャン結果より低品位炭において多数のき裂が確認できたことから,低品位炭においてガス化に伴うき裂の生成がより顕著であったためであると考えられる。以上のように,低品位炭におけるUCG中のAE 発生メカニズムに関して一定の知見を得た。 また,本年度においては,次年度実施予定の小規模UCG模型実験に供する石炭ブロック試料の採取も併せて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,石炭の品位がUCG中に発生するAEとどのような因果関係にあるのかを明らかにすることを目的としている。初年度である本年度は,石英ヒーターを用いた石炭の加熱実験により,高品位炭および低品炭を加熱した時に発生するAE活動の違いを検討することを主な目的として研究を実施した。 その結果,1) 150℃~300℃および450℃~500℃でそれぞれ熱膨張・水分蒸発および石炭のガス化の影響によりAEが発生すること,2) 温度変化が大きい場合,AEイベントが増大すること,3) 強粘結性の高品位炭と比較して,非粘結性の低品位炭において多くのAEが発生することが明らかとなった。これらの結果は,低品位炭の加熱によって生じる破壊活動は高品位炭の加熱時に破壊活動を発生する理由として考えられる熱膨張・水分蒸発と同様であると考えられるものの,石炭の品位の違いにより破壊活動の発生頻度が大きく異なることを示しており,石炭の品位が異なる場合における加熱時のAE発生に関する理解が進んだと考えられる。また,加熱時に破壊活動が活発になることは,UCGにおいてガス化反応領域の拡大や生成ガスの回収に有利に働くと考えられるため,UCGによる低品位炭の有効活用という観点においても一定の知見が得られたと考えられる。また,本年度において,次年度実施予定の小規模UCG模型実験に供する石炭ブロック試料の採取も併せて実施しており,次年度の実験を実施する準備はすでに整っている。 以上を総合すると,概ね順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である,石炭の品位とUCG中に発生する破壊音(AE: Acoustic Emission)にどのような因果関係があるのか,より実践的な検討を行うため,小規模UCG模型実験を実施する予定である。本実験では,石炭地下ガス化の小規模な模型実験を一辺20 cm程度に成形した石炭ブロックを用いて実施し,注入剤の注入流量や酸素濃度を変化させて実験を行い,ガス化反応領域の拡大や石炭中の温度を変化させ,AE活動をモニタリングする。以上より,今年度の石炭加熱実験で得られた知見の妥当性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に研究成果発表や研究打ち合わせのための旅費と次年度、北海道の研究施設で実施する実験に向けた実験の消耗品の購入を検討していたが、新型ウイルス感染症の影響により、一部の出張の見合わせと消耗品の購入の見合わせをすることになった。次年度、感染症の情勢が落ち着き、出張などが可能になった段階で直ちに予定している実験消耗品の購入を含めた北海道の実験施設での実験準備に取り掛かり、今年度使用できなかった経費を含めて使用していく予定である。
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