研究課題/領域番号 |
21K14577
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
白木 裕斗 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (50740081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カーボンニュートラル / 電力システム / 限界発電コスト / 不確実性 / 確率計画法 |
研究実績の概要 |
2021年度は、確率論的電力システムモデルの開発、文献調査による将来の電力需要分布の同定、および、電力需要の不確実性を考慮したシミュレーション分析を行った。 確率論的電力システムモデルの開発にあたっては、既存の電力システムモデルを確率計画法が適用可能な形式に拡張した。具体的には、実際の電力設備の投資が数年~十数年単位で計画されていることから、発電容量や送電容量は安易に変更できない(需要ケースに依存しない)変数として設定した。他方で、発電所や送電システムの運用計画は年以下の単位での変更も可能であるため、発電量や送電量は需要ケースごとに異なった値を取れる変数として設定した。 文献調査による将来の電力需要分布の同定にあたっては、2050年温室効果ガス排出量80%削減シナリオを中心に分析したモデル相互比較プロジェクト(JMIP)の結果を活用した。JMIPには、国内を代表する5つのエネルギーシステムモデルが参加している。人口・GDP・温室効果ガス削減目標など主要な前提条件が統一されているにも関わらず、2050年までの電力需要量はモデルごとに大きな幅があることが確認されている。本研究では、この研究で得られた各モデルの電力需要量を参考に、将来の電力需要のケースと生起確率を設定した。 上述の電力需要分布を踏まえた2050年までの電力設備投資量をシミュレーションした結果、①供給量不足を許容しない場合、最も需要量の大きいケースに合わせて設備投資計画がなされること、②最も需要量の大きいケース以外では2045年、2050年の限界発電コストがゼロになること、③最も需要量の大きいケース以外では太陽光発電や陸上風力発電の設備利用率も2045年以降に急速に低下することが確認された。"
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電力需要の不確実性を対象として、将来の不確実性を考慮したシミュレーション分析を試行できた。確率論的電力システムモデルの開発では、確率計画モデルへの拡張を2021年度前半に完了し、2021年度後半には、最新のコストパラメータ等の反映など、当初の予定を上回る開発が進められている。将来パラメータ分布の同定は、電力需要分布など、いくつかのパラメータの情報を収集しているが、2022年度も継続的に調査する必要がある。また、2050年カーボンニュートラルを前提に分析した学術論文の数が限定的であるため、電力需要等の一部のパラメータの分布については、2022年度以降に更新する必要がある。2021年時点で収集したパラメータ分布に応じたシミュレーションの試行は進められており、研究成果は学会で発表している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、2021年度に引き続き、将来パラメータ分布の同定、および、不確実性を考慮したシミュレーション分析を実施する。将来パラメータ分布の同定にあたっては、将来分布が算出可能なパラメータの種類を増やす。具体的には、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電や蓄電池の初期費用などの将来分布を調査する。また、2022年以降は2050年カーボンニュートラルを前提とした長期エネルギーシステムシミュレーションに関する研究成果が蓄積され始めると考えられるため、適宜、収集済みのパラメータ分布を更新する。加えて、収集したパラメータ分布を反映したシミュレーションを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に学生を雇用し、電力システムに関わるパラメータの分布を調査する予定であったが、予定通りに学生が雇用できなかったため、計画を延期した。2022年度には雇用可能な学生の見込みがあるため、未使用学はその経費に充てることとしたい。
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