研究課題/領域番号 |
21K14577
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
白木 裕斗 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (50740081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カーボンニュートラル / 電力システム / 不確実性 / 確率計画法 / 原子力発電 / 電気自動車 |
研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度に開発した確率論的電力システムモデルを用いて、原子力政策の不確実性を考慮したシミュレーション分析、および、電気自動車(EV)の普及による電力需要の不確実性を考慮したシミュレーション分析を行った。 原子力発電の社会受容性の不確実性を考慮したシミュレーション分析では、原子力発電の社会受容に不確実性が存在する状況下で,脱炭素を達成しうる我が国電力部門の2050年までの電源構成を推計した。その結果、2050年に原発を利用できない可能性が70%を超える場合、原発の新設・リプレースが選択されず、変動性再生可能エネルギーをバイオマス発電と蓄電池で補完する電源構成により電力システムの脱炭素化が実現される結果が示された。また、2050年に原発を利用できない可能性が10~20%ある場合、2030年以降から原発の新設やリプレースが選択されるが、原発が利用できない可能性が10%でもある場合には、原発が使えないケースのバックアップ電源として、原発と同規模の水素発電が建設される結果が得られた。 EVの普及による電力需要の不確実性を考慮したシミュレーション分析では、デマンドレスポンス資源としてEVが期待されていること、その一方で、その将来の普及量には不確実性が存在することに着目し、EVの普及水準が異なる複数のシナリオの下で、脱炭素を達成しうる我が国電力部門の2050年までの電源構成を推計した。その結果、EVの普及による2050年の電力需要量の増加率は約2~9%であること、EVの普及による電力需要の増加率に関わらず、2050年には太陽光発電と風力発電が主要な発電源となることが示された。また、EVの普及に伴い、水素発電による発電量が減少し、太陽光発電による発電量が増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子力発電の利用可能性や電気自動車の普及量を対象として、将来の不確実性を考慮したシミュレーション分析を実施できた。これらのシミュレーションでは、原子力発電の利用可能性や電気自動車の普及状況は社会・政治的な要因にも影響を受けることに着目し、あえて単一の確率分布を想定することを避けるなど、確率計画法の適用方法自体にも修正を加えており、シミュレーションの方法論についても学術的な知見を蓄積しつつある。また、これらの研究成果については、学会で発表しており、学術論文の投稿に向けた準備も進められている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、2022年度に引き続き、将来パラメータ分布の同定、および、不確実性を考慮したシミュレーション分析を実施する。 対象とするパラメータとしては、2022年度に対象としたEVに加えて、ヒートポンプ給湯器、蓄電池の普及状況についても調査し、分析に反映する。また、2022年に検討した分析手法(社会・政治的な要因にも影響を受けるパラメータを扱う際には、確率計画法とシナリオ分析を組み合わせた分析手法)について、論理的妥当性・有用性があることを示すため、リアルオプション分析等の関連する学術論文を精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の執行は当初予定通り進められたが、2021年度の未執行分が影響し、次年度使用が必要となった。2023年度には学術論文の投稿や学会発表の実施が見込まれるため、未使用額がその経費に充てることとしたい。
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