研究実績の概要 |
近年,地熱発電において天然の熱水や蒸気が乏しい場合に,水を送り込んで蒸気や熱水を得る技術を活用する高温岩体地熱発電(EGS: Enhanced Geothermal System)が注目されている。一方で,EGSにおける水の注入に伴い発生する誘発地震が注視されている。これまでに,既存断層へ流体が流れ込むことで間隙水圧が上昇して断層すべり運動が促進されて地震が誘発されることや,総注水流量が増えるにつれて地震の規模(マグニチュード)が増加する傾向があることもわかってきた(例えばMcGarr, 2014)。しかし,これまでに誘発地震発生に関連して掘削井と既存断層の距離等の地下構造に着目した研究はおこなわれていない。よって本研究では、掘削井と既存断層に関連する地下構造のうち、特に掘削井が既存断層に直接貫通していないケースに着目した室内注水試験を実施し、誘発地震発生に関与するパラメータについて検討した。 本年度は、母岩の浸透性及び注水時の有効圧に着目して2パターンの注水速度について注水実験を実施した。インタクト及び熱処理を実施した花崗岩を使用し、産総研設置の油圧式三軸圧縮変形装置を用いて注水試験をおこなった。その結果、母岩の浸透性、注水時の有効圧、及び注水速度が、注水時の総応力降下量や応力降下特性(急激に応力降下するか緩やかに応力降下するか)に影響を及ぼすことがわかってきた。現在、研究目的遂行に向けてさらに実験を進めている。
|