研究課題/領域番号 |
21K14594
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
橋谷田 俊 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40805454)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | キラリティ / 近接場光 / 金属ナノ構造 / スネルの法則 / 禁制光 / 偏光計測 |
研究実績の概要 |
キラル(左右非対称)な金属ナノ構造の近傍に局在するキラルな特性を有する近接場光のスペクトル特性を明らかにできれば,キラル近接場光を用いた高感度なキラル分子分光法の開発が期待できる。本研究では,ナノ構造を担持する基板によって伝搬光に変換される近接場光(禁制光)を偏光解析・分光検出することで,キラル近接場光のスペクトルが迅速に得られる手法を開発することを目指している。本年度はキラル近接場光スペクトル測定装置の開発に着手した。対物レンズの前焦点(イメージ)面と後焦点(フーリエ)面を同時に観測するために, 4f光学系を組み込んだ光学顕微鏡を自作した。イメージ面でテスト試料として用いた1次元グレーティングを観測したところ,フーリエ面では一方向に光のスポットが周期的に並んだ回折パターンが観測された。また,グレーティングの周期を変えると,回折パターンの周期も変化することを観測した。本手法を金属ナノ構造試料に適用するため10 nm程度の分解能を有するピエゾステージと高開口数の油浸対物レンズ,白色レーザーを光学顕微鏡に導入したが,まだフーリエ面の計測には至っていない。円偏光度の計測のため,アクロマティック波長板と直線偏光子を組み合わせた光学系を構築した。この光学系を用いてキラルな卍型金ナノ構造の円二色性スペクトルを計測したところ,光弾性変調器を用いた偏光計測で得られたスペクトルと同様のスペクトルが得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,キラル金属ナノ構造を担持する基板によって散乱される近接場光を偏光解析・分光検出することでキラル近接場光スペクトルを迅速に測定する手法の開発を目標としており,そのための実験装置の整備は進んでいる。しかし,金属ナノ構造体の近接場光検出には至っておらず,これは次年度に取り組むべき課題となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
金属ナノ構造体の近接場光検出実験を進める。散乱電磁場の厳密解が分かっている球状ナノ粒子を試料として用いて実験し,その後キラル金属ナノ構造の実験に移行する。様々な構造因子を持つキラルナノ構造を作製し,巨視的な分光測定で得られる電気(磁気)感受率,キラル感受率スペクトルと本研究で開発した装置で得られるキラル近接場光スペクトルの比較から,キラル近接場光のスペクトル特性を決めるナノ構造の物性因子を明らかにする。
|