超分子や超分子ポリマーは多数の分子が非共有結合で結合した分子集合体であり、環境(温度や溶媒、濃度)に応じて非共有結合が形成・開裂し、その分子集合構造が大きく変化する。本研究では環境変化として高分子添加に着目し、分子集合体形成や形成過程に及ぼす高分子の効果について明らかとすることで、高分子添加による分子集合体制御(非平衡状態や準安定状態の創出)を目指した。 高分子添加による溶媒極性の変化を抑制するために、低分子媒体として極性の低いオリゴジメチルシロキサン(ODMS)やメチルシクロヘキサン、添加する高分子としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。また様々な分子量を持つPDMSを用い、添加高分子の分子量依存性も評価した。分子集合体を形成する分子として低極性溶媒に対する溶解性向上部位を導入したC3対称性のオリゴ(フェニレンエチニレン)誘導体(OPE)を合成し評価を行った。紫外可視吸収スペクトルの温度変化測定によって会合挙動を評価した結果、PDMSの添加の有無やPDMSの分子量、濃度に依存して、その会合挙動に違いが観測された。またキラル部位を導入したOPE誘導体では、PDMS添加の有無によってCDスペクトルの強度に大きな違いがみられた。結果として、分子集合体形成や形成過程への高分子添加の影響が示された。また、上記効果の一般性を評価するために溶解性向上部位を導入したナフタレンジイミド(NDI)誘導体の合成を行った。今後、NDI誘導体の会合挙動に及ぼすPDMS添加効果について評価を行う予定である。 またPDMS、ODMSを媒体として用い、様々な電荷移動錯体の会合定数を求め、PDMSやODMSの溶媒効果について評価を行った。結果、PDMSやODMS中では芳香族ドナーアクセプター相互作用が強く働き、その溶媒効果は芳香環の大きさに影響を受けることが明らかとなった。
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