研究課題/領域番号 |
21K14602
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横山 創一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (40811211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単分子接合 / 単分子電気伝導度 / オリゴフェニレン / オリゴチオフェン / MCBJ |
研究実績の概要 |
本研究では、金属電極に接合するアンカーユニットと導電性分子ワイヤユニットの各分子軌道に着目した単分子電気伝導度との相関性を解明し、優れた電気伝導特性を示す単分子エレクトロニクス材料の開発を目的とする。具体的には、金属電極上とπ接合可能なアンカーユニットを持ちつつ、π共役分子ワイヤユニットを垂直に連結したピラー状分子ワイヤ構造の開発する。アンカーユニットとワイヤユニットの軌道を切り離すことで、各ユニットの分子軌道が単分子電気伝導度に与える影響を探る。 2021年度は、①アンカー部と分子ワイヤそれぞれに独立した分子軌道を配分可能なユニットの選定、②各種分子ワイヤ長の異なる連結体の合成検討、ならびに③単分子電気電導度測定を含む物性評価を行った。項目①では、金属電極とπ接合可能なトリアザトリアンギュレン(TATA)骨格を、導電部となるオリゴチオフェンもしくはオリゴフェニレンワイヤの両末端に連結した誘導体を設計した。これらは理論計算によりTATA連結オリゴチオフェン誘導体ではHOMO軌道が分子ワイヤユニットに独立して局在するのに対して、TATA連結オリゴフェニレン誘導体ではHOMO軌道がアンカーユニットに局在するといった対称的な結果を示すことを明らかにしており、本研究課題と合致する理想的な分子骨格になることを見出した。項目②の各種誘導体の合成はすでに達成しており、項目③の単分子電気度測定の検討を行っている。TATA連結ワイヤオリゴチオフェン誘導体に関しては、各チオフェンユニット数に対する単分子電気伝導度を決定しており、一般的な接合ユニットであるチオエーテルと比較しても、大きな電気伝導度特性を示した。アンカー基と金属電極間の間で100 meV以上の高いカップリングを示すことが実験事実より判明し、TATAユニットが高伝導度を示す高性能なアンカー基として駆動することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初目的としていたピラー状分子ワイヤの分子設計ならびに誘導体の合成を達成し、一部の誘導体に関しては単分子電気伝導度測定も行った。前述の通り、TATA骨格が金属電極上にπ接合することで、非常に高い単分子電気伝導度を示すといった想定通りの実験事実を得ている。加えて、研究計画時には予期していなかった成果として、これらの誘導体は一般的なオリゴチオフェン/オリゴフェニレンよりも、優れた溶解性を示しつつ、高い発光量子収率を示すといった特異的な実験結果も得られた。以上の理由より、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
分子軌道の配置が逆転した構造であるTATA連結オリゴフェニレン誘導体に関しては初年度に合成したものの、単分子コンダクタンス評価には至っていない。加えて、金属電極に接合した状態における分子の状態密度や、接合状態、メカニズムの解明など計算科学を駆使した考察も不十分である。次年度では引き続き、これら誘導体の単分子電気伝導度評価を行っていくとともに、分子構造のさらなる最適化を行う。さらに、分子ワイヤ・アンカー部それぞれの分子軌道配置が単分子電気伝導度に与える影響を理論計算と組み合わせながら理解を深めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用計画では学会の参加費等を計上する予定であったが、参加する予定であった学会がオンライン開催となったため、旅費に関する支出が発生しなかった。加えて、当初、標的分子の合成経路を確立するため複数の合成戦略を立てていたが、予定よりスムーズに目的物の合成に成功したため試薬費などの経費を抑えることができたたため、次年度使用額が生じた。この分は翌年度の研究に関係する試薬や各種ガラス器具代、金基板などの購入費に充てる予定である。
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