研究実績の概要 |
本研究課題では、光応答性分子結晶のフォトメカニカル応答に着目し、分子一つ一つの微視的な変化と巨視的な物性変化がどのように関連しているかを明らかにすることを目的としている。本年度は、9-メチルアントラセン(9MA)をモデル化合物とし、まず薄膜単結晶中における光反応過程を吸収スペクトル変化で追跡することを試みた。9MAの薄膜単結晶中における光反応は、溶液中とは異なり、周囲の分子の影響を受ける「協同的光反応過程」が存在することを明らかとした。また、多結晶薄膜中の光反応ダイナミクスと比較することにより、この協同的光反応過程は結晶欠陥の影響を強く受けることが示唆された。さらに、吸収スペクトル変化と結晶サイズ変化の同時測定を行ったところ、光反応の進行度合いと結晶のサイズ変化が比例することを新たに見出した(Angew. Chem. Int. Ed., 61(2), e202114089 (10 pages) (2022).)また、6π電子系高速フォトクロミック分子の機能開拓にも取り組んだ。高い光反応性と高速熱退色性を両立させた分子の開発(New J. Chem., 45(40), 18969-18975 (2021).)や、トップダウンアプローチおよびボトムアップアプローチによるナノ粒子の作成(Materials Advances, 3(2), 1280-1285 (2022).)について報告した。
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