本申請研究では、光と物質の強結合状態を層状ペロブスカイト半導体に施すことで、ペロブスカイト半導体が示すスピン関連物性がどのように変化するのか、そしてその変化が物質の特性向上につながるかの調査を行なった。本研究では主に、磁気円偏光二色性および非線形光学応答の円偏光二色性の評価を行なった。 光と物質の強結合状態は、誘電体多層膜と金属膜の2枚のミラーにてペロブスカイト半導体を挟んだファブリーペロー型共振器を用いることで実現した。層状ペロブスカイト半導体は、強い励起子束縛エネルギーを有するため、数百meVの非常に大きなラビ分裂を示し、本来の励起子遷移ピークが二つに分裂したピークが非常に明確に室温にて観測することができた。 まず、強結合状態における磁気円偏光二色性の評価を行なった。結果として、磁気円偏光二色性の大きな増大が観測できた、またこれは同時にゼーマン分裂の増大していることを意味する。ラビ分裂によって形成される二つの分裂したポラリトン準位も磁気縮退を有しており、そのゼーマン分裂が元来の励起子遷移のゼーマン分裂よりも大きいことが明らかになった。また興味深いことに、強結合状態になることで、元来の励起子遷移に由来するゼーマン分裂も増大することが分かった。これまで、量子ドットなどの低次元半導体では、磁性有する元素をドーピングすることで、その磁気円偏光二色性を向上させてきたが、本研究では、物質の組成を変化させることなく、2枚のミラーで挟むだけで実現した。 また、非線形光学応答の円偏光二色生では、ペロブスカイト半導体を、異なる向きの円偏光励起した際に発生する第二次高調波発生効率の評価を行なった。結果として、強結合状態にすることで、高エネルギー側のポラリトン準位にて右巻き、左巻きの円偏光の向きの認識性が向上すること、また非線形磁気双極子成分の向上も実現できることが明らかになった。
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